2018年のインタビューです。
ー 今年はイタリア、バルセロナと2戦でフロント・ローを獲得していますね。あと一歩で表彰台という感じですが、4年目を迎えてどうですか?
「惜しいレースが続いています。でも、ミサノは転んでしまったけど、アラゴン、タイと後ろの方からのスタートだったけど、追い上げることができるようになってきた。だんだん他のライダーと競り合っている時に、気持ちで負けないようになってきたと思う。バトルを楽しめるようになってきました。」
ー これまでは、無我夢中という感じだったのですか?
「今までは、結果を出さないといけないという気持ちが先行していて、レースを楽しむという気持ちはあまり強くなかったと思う。それが、ここ数戦はバトルを楽しめるようになってきた。予選までは、レースまでの組み立てという感じで、半分仕事という感じだったけど、今はレースを楽しめるようになってきた。」
ー 今年はトップ10にも入りましたね。
「今年はようやくレースが変わってきたと思う。バルセロナで5位、アラゴンで6位に入りました。」
-どのように変わったのですか?
「バトルできるようになってきて楽しいです。バトルするようになったら、自分が周りを見る目が変わってきた。一度、チャンピオン争いしているライダーと競り合うと、バトルできるんだという自信がつく。今までは、彼は表彰台常連だからみたいな意識があったと思うけど、今はそういう気持ちはなくなった。今は集団の後ろについても、前に行こうと考えている。今までは、すぐ前のライダーのことしか考えていなかったけど、今はグループ全体が見えるようになってきた。」
-自分のライダーとしての強みは、何だと思いますか?
「自分の強みをまだ見い出せていないんです。それが今の課題だと思う。自分の強みを知ってそれを伸ばすことが大事だと思う。自分の強みを生かせる人がレースに勝てるんだと思うし、表彰台争いできるんだと思う。自分はまだそれができていない。希望的には、競り負けないライダーになりたいですね。競り合ったら、必ずその相手の前でゴールできるようになりたいです。
バルセロナでは、実感しました。最終ラップに入ったところで、優勝したエネア(バスティアニーニ選手)のすぐ後ろにいた。彼は1周であれよあれよと先頭に立って勝ったのに、真後ろにいた僕は何もできずにそのまま終わってしまって。勝つには嗅覚みたいなものがあるのかなと思う。そういう強さを身につけたいですね。」
-Moto3は、みんなが同じダンロップ・タイヤを使っていますね。ダンロップとの関係はどうですか?
「ミニ・バイクを始めたころから、ダンロップをずっと使っている。ダンロップしか履いたことはないんです。僕はダンロップ・ライダーですね。」
-好きなコースはありますか?
「左回りのコースが好きです。ザクセンリンク、アメリカ、フィリップとか。左回りは少ないんですよ。たぶん、子どものときに、どこのコースで走り始めたかによるんじゃないですか。」
-来年もまたMoto3クラスに参戦する予定ですね。
「実は来年、Moto2に上がることも考えていました。来年、バイクのエンジンが変わるので、みんながリスタートする状態になるので、いいタイミングかなと思って。でも、パオロ(チーム・オーナー)と話しあって、まだ表彰台に上がってないし、今年上がれなかったら、Moto2クラスに行っても上がれないと思う。だから、最低でもMoto3で表彰台に上がって、トップ争いして、Moto2に行きたいと思ったんです。」
-来年も同じチームで参戦するのですね。
「来年も同じチームでMoto3に参戦します。Moto3で他のチームという選択肢もあったと思うけど、今のチームと関係もいいし、パオロとの関係もいいので。合う人とやっているのに、離れるのは意味はないと思ったのです。」
-チーム・オーナーである、マルコ・シモンチェリ選手(元MotoGPライダー、2011年にレース中の事故で亡くなった)のお父さん、パオロさんは、どんな方ですか?
「昭和のお父さんみたいな感じの人です。日本人みたい。厳しいところは厳しいし、パオロの目から見て、いいなということがあると喜んでくれる。厳しく言われることも多いです。」
-どんなとき厳しいのですか?
「例えば100%集中していなくてミスしたり、転んだりすると、すごく怒られます。逆に転んでいても、パオロの目で見て、何か試していたとか、攻めた結果の転倒だったら、僕が落ち込んでいても、パオロはハッピーなんです。攻めの結果だから、しょうがないという感じです。
本当に怒ってくれる人はなかなかいないと思う。本当にありがたいことだと思います。チーム・オーナーとライダーという関係で、こういうのは珍しいですよね。」
-ところで、今、イタリアのリッチョーネに住んでいるんですね。(注:リッチョーネは、ミサノ・サーキットの近くの海辺の街)
「パオロの持っているアパートに住んでいます。」
-シモンチェリ選手のチームに入ったことについて、どう思いますか?
「去年から、このチームにいて、パオロの家でシモンチェリ選手のレースをホームビデオで見たりした。会えたら会っておきたかったなあ、と思います。すごく人間として惹かれるものがあると思う。いつも明るくて、どことなく翔也くん(Moto2クラス参戦していた故富沢翔也)に似ていると思う。シモンチェリ選手の父親のチームに入るなんて、4、5年前には考えられなかったから、不思議な感じですね。」
-普段はどんなトレーニングをしているのですか?
「ジムに行ったり、ミニ・バイクみたいのに乗ったりしている。たいていミニ・バイク・コースに行くと、誰かしらライダー仲間がいるので、一緒に走ったりしています。エネア(バスティアニーニ選手)とか、マティア(パシーニ選手)もよくいますね。今では、ミサノがホームGPという感じです。」
-イタリア語はもう問題ないですか?
「イタリア語には、困らないですよ。かわいい女の子も多いし、イタリア人と話したかったので、そういうモチベーションもあったから。英語もイタリア語も同じくらい話せると思う。」
-レース以外の趣味はありますか?
「特にないかな。音楽はレゲエが好きです。子どものときに山本KID(総合格闘家)を見ていて、彼の登場曲がレゲエだった影響だと思う。スタート前にもレゲエを聞いています。たぶん、あまりレゲエを聞いている人はいないと思うけど、とてもリラックスできるんです。」
-今年の残りレースは少なくなりましたが、これからの目標は?
「日本GPがはじまるとあっという間に最終戦になってしまうんですよね。今年は、惜しいレースが多いけど、なんとかしっかりまとめて、表彰台に上がりたいです。」