今季の全日本モトクロス選手権シリーズは、全7戦のスケジュール。その開幕戦が、4月10日(土)~11日(日)に熊本県のHSR九州で開催された。阿蘇の外輪山を大きく望む菊池郡大津町にあるコースは、ホンダの熊本製作所に隣接したクルマやバイクの運転に関する複合施設内に位置し、全日本トップレベルのハイスピードかつ全開時間が長いコースレイアウトを特徴とする。
今回は土砂を搬入したメンテナンスは直前に実施されず、固い路面の上に細かい土が積もったセクションも多め。本来の土壌である黒土を感じさせる区間も多くあった。土日とも晴天に恵まれたが、両日とも風が強く、走行によって巻き上げられた大量の土ボコリが風に舞うコンディション。いつもの半分近いレース時間となる15分+1周の3ヒート制が導入されたIA1はもちろん、それ以外のクラスでも、スタートでなるべく前の位置を確保して少しでもクリアな視界を確保することが、上位進出のカギとなった。
最高峰クラスとなるIA1の決勝ヒート1では、昨年と同じくヤマハファクトリーチームから参戦する富田俊樹選手(#2)が、スタート直後に2番手の好位置。さらに今年も富田選手のチームメイトとなる渡辺祐介選手(#3)、今季はカワサキにマシンをスイッチしてファクトリーチームに加入した能塚智寛選手(#5)が続いた。レース序盤から、富田選手はトップのライダーとドッグファイトを展開。4周目には、何度も順位を入れ替えるような激しいバトルとなり、一度は富田選手が先行した。
3番手争いは、2周目に能塚選手が先行。4周目には、能塚選手が2番手に浮上したが、6周目に再逆転を許した。そして迎えた9周目の最終ラップ、再びトップ争いは激しさを増し、お互いにマシンをぶつけるラフなファイトに。2度目の接触で両者が転倒し、この間に2台をパスした能塚選手が優勝、渡辺選手が2位となった。富田選手は5位でゴール。能塚選手にとっては、タナボタながら全日本最高峰クラス初優勝となった。
決勝ヒート2では、富田選手と渡辺選手のヤマハファクトリーチーム勢が、スタートでトップ2を形成。両者とも、仕様は異なるがサンド系のタイヤを装着しており、耕されたスタート直後の直線での加速で大きなアドバンテージを得た。トップの富田選手は、序盤で3~4秒のリードを確保。2番手の渡辺選手も、3周目に能塚選手が3番手まで浮上してくる間に、6秒ほどのアドバンテージを得た。
その後、トップの3台はそれぞれが単独走行に近い状態に。そして富田選手がレースを制し、渡辺選手が2位となった。能塚選手は3番目にゴールしたが、レース後の排気音量測定で規定値をオーバーしていたことから失格扱い。これにより、今季は6年ぶりにホンダのマシンを駆る小方誠選手(#4)が、ひとつ順位を繰り上げて3位となった。小方選手は、ヒート1とヒート2ともにスタートで出遅れ、ヒート1は6位。ヒート2では一時10番手を走行していたが、中盤に追い上げて3位となった。
決勝ヒート3では、小方選手がスタート直後の混戦でトップに浮上。渡辺選手が2番手、能塚選手が3番手と上位を占めたが、富田選手はスタート直後に11番手と出遅れた。それでも、富田選手は1周目に7番手まで順位を回復。そして能塚選手は、1周目に渡辺選手をパスすると、2周目には小方選手を抜いて先頭に立った。3周目までは、能塚選手と小方選手と渡辺選手が接近した状態で、後続を引き離すトップ集団を形成していたが、4周目になると渡辺選手が遅れはじめた。
一方、富田選手は5番手まで浮上し、4番手のライダーをマークした。レース後半、渡辺選手は上位2台から完全に遅れ、優勝争いは能塚選手と小方選手のマッチレースに。そして最終ラップの9周目に、小方選手がコース中盤のタイトターンで能塚選手をパスした。しかし終盤のリズムセクションからタイトターンで能塚選手が再逆転に成功。これで能塚選手が優勝、小方選手が2位となった。渡辺選手が3位、最終ラップで逆転した富田選手が4位となり、ダンロップ勢が上位を独占した。