2025年の全日本モトクロス選手権は全7戦で競われ、一昨年までと同じく4月第2週末に熊本県のHSR九州で開幕した。ダンロップタイヤは昨年、最高峰クラスのIA1で連覇を達成。今季はさらに体制を強化し、ヤマハファクトリーチームから参戦するディフェンディングチャンピオンのジェイ・ウィルソン選手(#1)をはじめ、ホンダのトップチームから参戦する横山遥希選手(#2)と大倉由揮選手(#4)、カワサキファクトリーチームの能塚智寛選手(#5)、ヤマハセカンドチームの大城魁之輔選手(#8)や渡辺祐介選手(#15)ら、多くのライダーがダンロップタイヤを使用する。
この開幕戦は、ワンデースケジュールかつ入場無料で実施。ホンダの熊本製作所に隣接するコースは、フラットな土地に設けられ、ハイスピード区間や多彩なジャンプも有する。本来は阿蘇の火山灰に由来する黒土の土壌だが、近年はメンテナンスの際に山砂が一部区間に敷かれることも多い。前夜のまとまった降雨により、朝の路面はマディコンディション。しかし朝8時頃に雨が止むと、天候は一気に回復し、気温は低めながら強風が吹いたことも後押しとなり、路面はどんどん乾いていった。ただし、深いギャップやワダチ、岩盤が露出した区間も多く、難しいコンディションとなった。
30分+1周の2ヒート制で実施された開幕戦の決勝ヒート1で、ホールショットを奪ったのは横山選手。2周目には、ウィルソン選手が1台を抜いて2番手に順位を上げると、横山選手の攻略にも成功してトップに立った。3周目、大倉選手は転倒を喫して6番手までポジションダウン。これで5番手まで順位を上げたのは、スタートで出遅れていたイタリア出身のジュゼッペ・トロペペ選手(#42)だった。トロペペ選手は、昨年度ランキング3位となったビクトル・アロンソ選手に代わりチームに加入した、世界選手権での経験もあるライダー。昨年のアロンソ選手と同じく、ガスガスのマシンを駆る。
レース中盤、トップのウィルソン選手は快調にリードを拡大していたが、6周目にトロペペ選手がついに2番手まで浮上。この段階で7秒ほどあったギャップを削り、8周目にはほぼ接近戦となった。翌周、トロペペ選手は逆転に成功。しかしその直後、マシンが白煙が噴き始め、翌周の1コーナーでトロペペ選手はマシンを止めた。これでトップに返り咲いたウィルソン選手は独走状態。そのまま15周を走破し、開幕戦で初勝利を挙げた。レース後半、横山選手は2番手の選手を僅差で追い続けたが、ラスト2周でミスを連発して3位。9周目に大倉選手が再び転倒したことで順位を上げた大城選手が4位、大倉選手が5位、今年から最高峰クラスにステップアップしたカワサキを駆る西條悠人選手(#37)が6位だった。
決勝ヒート2でホールショットを奪ったのはウィルソン選手。これに横山選手と大城選手が続いた。さらに1台を挟み、西條選手が5番手、能塚選手が6番手、大倉選手が7番手で1周目をクリア。ヒート1でマシントラブルが発生したトロペペ選手は、残念ながらこのヒート2に出走することができなかった。レース序盤、トップのウィルソン選手はじわじわとリードを拡大していき、2番手の横山選手から7番手の大倉選手までは縦に長めの集団となり、8番手以下は最初の4周で15秒ほど遅れた。2番手の横山選手も、大城選手が後ろのライダーと3番手争いをしている間にリードを6秒ほどまで拡大し、これでウィルソン選手だけでなく横山選手も単独走行となった。
5周目、能塚選手は西條選手をパスして5番手に浮上したが、翌週に転倒して後退。これにより、5番手に返り咲いた西條選手を大倉選手が僅差で追うことになり、7周目には大倉選手が逆転に成功した。この段階で大倉選手は3番手争いを繰り広げる2台から10秒ほど遅れていたが、少しずつ距離を詰めていった。一方、トップのウィルソン選手と2番手の横山選手は、9周目の段階で約10秒差となっていたが、その後に距離が詰まり、13周目には約3.5秒差。するとここでウィルソン選手がペースを上げ、逃げ切りを図った。ラスト2周となった15周目、その3周前に4番手へと後退していた大城選手に追いついた大倉選手が、逆転に成功。そしてウィルソン選手が優勝、横山選手が2位、大倉選手が4位、大城選手が5位、西條選手が6位となった。