2025年の全日本モトクロス選手権シリーズは、全7戦のスケジュール。第4戦中国大会の終了後、約3ヵ月間の長いインターバルに入っていたが、待望の今季後半戦を迎え、第5戦近畿大会が奈良県の名阪スポーツランドで開催された。三重との県境に近い山中に位置する、サンド質の路面を特徴とするコースは、幅が狭くてアップ&ダウンが多いテクニカルなレイアウト。過去にシーズンの流れを何度も変え、ニューヒーロー&ヒロインを生み出してきた。
予選が繰り広げられた土曜日は、事前に心配されていたほどの降雨はなかったが、日曜日の朝型にかけて激しい雨が降り、朝のコースはかなりぬかるんだ状態。とはいえ、水はけのよいサンド路面で、日中は陽射しも降り注いだこともあり、次第に回復して午後にはベストコンディションとなった。ただし柔らかくなった路面には、走行により深いワダチが随所に刻まれ、これが難易度を高めた。なお日曜日の昼休憩時には、10月上旬に米国で開催されるモトクロス・オブ・ネイションズの壮行会も実施された。
最高峰となるIA1クラスでは、ホンダサポートの横山遥希選手(#2)が練習中のケガで今季の残り3戦を欠場することがアナウンスされ、カワサキファクトリーチームの能塚智寛選手(#5)は予選でクラッシュして決勝出走をキャンセルした。今大会の決勝レースは15分+1周の3ヒート制。そのヒート1では、ホンダがサポートする大倉由揮選手(#4)がホールショットを決め、これにヤマハセカンドチームの大城魁之輔選手(#8)が続いた。
さらに、ヤマハファクトリーチームのジェイ・ウィルソン選手(#1)、ホンダを駆る小方誠選手(#9)が続くと、ウィルソン選手が先頭に立って1周目をクリアした。レース序盤、ウィルソン選手と大倉選手と大城選手が、4番手の小方選手を数秒離しながらトップグループを形成。大倉選手はしぶとくウィルソン選手に喰らいついたが、4周目にミスして5秒ほどの間隔になった。レース後半、上位勢は単独走行となり、ウィルソン選手が優勝、大倉選手が2位、大城選手が3位、小方選手が4位となった。
決勝ヒート2では、浅井亮太選手(#38)がホールショット。これに続いた大城選手を大倉選手がパスすると、勢いに乗る大倉選手は浅井選手の攻略にも成功し、オープニングラップでトップに立った。ウィルソン選手はやや出遅れたが、混戦の中で順位を上げて1周目3番手。逆に大城選手は、5番手まで順位を下げた。2周目、ウィルソン選手は浅井選手を抜いて2番手に順位を上げると、トップの大倉選手に接近。翌周から僅差のトップ争いが繰り広げられた。
大倉選手は懸命にポジションを守ったが、4周目にウィルソン選手が逆転に成功。翌周から、ウィルソン選手が一気にリードを拡大していった。この4周目、トップ2から4秒ほど遅れた3番手争いでは、1台が転倒して大城選手が順位を上げ、浅井選手に僅差で迫った。6周目、大城選手は浅井選手をパス。レース後半の上位勢はまたも単独走行となり、ヒート1と同じく11周でチェッカーとなったレースでウィルソン選手が勝利を飾り、大倉選手が2位、大城選手が3位、浅井選手が4位となった。
決勝ヒート3では、再び大倉選手がホールショット。これに大城選手が続いて、オープニングラップをクリアした。連勝のウィルソン選手はかなり出遅れたが、それでも混戦の中でポジションを回復して1周目5番手。さらに、2周目には4番手、3周目には3番手と、着実に上位にたどり着いた。この段階で、大倉選手は大城選手に対して約3秒のリード。しかし翌周、ウィルソン選手が大城選手を抜いて2番手にポジションアップすると、一気に大倉選手の背後に迫った。
4周目以降、大倉選手とウィルソン選手は、3番手の大城選手をじわじわと離しつつマッチレースを展開。大倉選手は再びトップ死守を試みたが、7周目にウィルソン選手が逆転に成功した。それでも、大倉選手は2秒ほどのギャップでウィルソン選手を猛追。しかしラスト2周となった10周目にミスして遅れると、最終ラップに激しくクラッシュし、この間に大城選手が先行した。そしてレースは、ウィルソン選手がまたしても勝利。大城選手が2位、大倉選手が3位となった。