2025年の全日本モトクロス選手権シリーズは最終戦を迎え、第7戦「第63回MFJ-GPモトクロス大会」が宮城県のスポーツランドSUGOで開催。全日本格式となる4クラスは、いずれもこの最終戦までチャンピオン決定が持ち越しとなっていた。土曜日の朝までに降った雨が止むと、大幅に天候が回復。土曜日は晴れ時々曇りで陽射しもそれなりにあり、なおかつ強風が吹き荒れたことで、粘土質の路面は急速に改善され、同じく晴れ時々曇りだった日曜日もドライコンディションとなった。ただし、粘土質の土壌が適度な水分を含んだことで、随所に深くて固いワダチが発生。さらに一部区間は日曜日でもぬかるんでおり、攻略が難しいコンディションとなった。
最高峰となるIA1クラスは、ダンロップ勢によるチャンピオン争い。ヤマハファクトリーチームのジェイ・ウィルソン選手(#1)が、ホンダサポートの大倉由揮選手(#4)を36点離して今大会を迎えた。なおこの最終戦には、世界選手権最高峰のMXGPクラスで2025年のシリーズチャンピオンを獲得した、カワサキファクトリーチームのロマン・フェーブル選手(#3)がスポット参戦。フェーブル選手は、ダンロップに25年ぶりのMXGPタイトルをもたらした。一方、全日本勢の有力選手では、ホンダの横山遥希選手(#2)とカワサキファクトリーチームの能塚智寛選手(#5)が、ケガにより今大会を欠場した。
フェーブル選手のスポット参戦で注目を集めたIA1クラスの決勝は、25分+1周の2ヒート制で実施。そのヒート1では、フェーブル選手がホールショットを奪い、これにヤマハセカンドチームの大城魁之輔選手(#8)が続いた。大城選手は1周目に4番手まで後退し、ウィルソン選手が3番手浮上。同じくモトクロス世界選手権からスポット参戦した若手ライダーを含む外国人勢が、レース序盤から日本人勢を大きく引き離していった。5周目、ウィルソン選手は2番手を約7秒差で追っていたが、転倒を喫して手を負傷。これによりリタイアに終わった。フェーブル選手は独走を続け、14周のレースで2位を約20秒も離して優勝した。
世界レベルのライダーたちに大きく離された日本人勢では、レース序盤から徐々に後続を引き離した大城選手が、途中から完全な単独走行を続けて3位を獲得。ただしフェーブル選手からは約45秒遅れてのゴールとなった。大倉選手はレース中盤まで5番手を走行していたが、カワサキのマシンを駆る西條悠人選手(#37)が8周目にパス。翌周、西條選手は同じくカワサキに乗る安原志選手(#7)を抜いて4番手に順位を上げ、その後に引き離して4位でゴールした。安原選手は5位でフィニッシュ。大倉選手は8位に終わったが、ポイントランキングではノーポイントのウィルソン選手に10点差まで迫って最終レースを迎えることになった。
シリーズタイトルの行方にも注目が集まった決勝ヒート2は、負傷したウィルソンが出走をキャンセル。これにより、23位以内でゴールすれば大倉選手が逆転チャンピオンという状況となった。レースは、再びフェーブル選手がホールショットを奪い、これに大城選手が続く展開。フェーブル選手は、ヒート1よりも早いペースでリードを積み重ねていった。大城選手は、1周目に世界選手権ライダーの先行を許して3番手。序盤の2周で8秒ほど引き離されたが、その後はギャップの拡大を最小限にとどめた。大城選手の約5秒後方では、大倉選手と西條選手が接近戦を展開。3周目に西條選手が先行すると、レース中盤にかけて大倉選手をじわじわと引き離し、大倉選手の背後には安原選手がじわじわと近づいた。
6周目、大倉選手まで約4秒に迫っていた安原選手がミスして、7番手に後退。これで大倉選手の後続に対するリードは、再び約6秒に拡大した。レース中盤以降もフェーブル選手は圧倒的な速さをキープして周回を重ね、終わってみれば14周のレースで約40秒も2位を離し、完璧な走りで勝利を収めた。大城選手は、2位と約16秒差の3位。この大城選手に最後は約2秒差まで迫った西條選手が4位となった。大倉選手は9周目に6番手となったが、この選手が11周目に転倒で後退したことから5位でフィニッシュ。最高峰クラス参戦4年目で初めてチャンピオンに輝いた。ダンロップのIA1シリーズタイトル獲得は3年連続となる。