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JSB1000
長島哲太選手6位走行中、トラブルでリタイア
【独自スイングアーム投入】
第3戦SUGO大会から約2カ月のインターバルを挟み、後半戦スタートとなる第5戦もてぎ2&4大会が、8月24日、25日に栃木県モビリティリゾートもてぎで行われた。
チームはSUGOでのレース後、6月上旬に鈴鹿サーキットで、さらに7月はオートポリス、岡山国際サーキットで開発テストを行ってきた。そうして着実にタイヤ開発を進めながら、チームはシーズン当初から準備してきたものがやっと、実戦投入できるようになった。それは、最新のレーシングマシン的車体バランスを得るため独自に造り上げたスイングアームだ。
パーツメーカー"アクティブ”の設計、技術サポートを得(設計は同社テクニカルアドバイザーである光島 稔さんが担当)、さらに実製造と加工に関しては矢作産業が全面的に担当。スイングアームを構成するパネルの削り出しからリアのアクスルシャフト周りの加工部品まですべて製作し、完成させたものだ。
【フリー走行、予選】
そうしたスケジューリングとなったため、ニュースイングアームを装着したマシンのシェイクダウンはレースウイーク初日のフリー走行1回目となった。メインフレーム部とのバランス、このレースに向けて造られた新型タイヤとのマッチングを考え、藤沢さんによって想定された車体バランスをマシンに施し、シェイクダウンを行った。今回のレースは2&4スタイルのため、四輪のフォーミュラカーもレースウイーク中に走る。開幕戦鈴鹿も同じ2&4スタイルで、フォーミュラカーのタイヤのゴムが路面に擦り付けられ、その影響を大きく受けたことから、難しいレースになることはチーム全員の共通認識となっていた。
金曜日はまだフォーミュラカーの走行はないため、そうした影響を受けずに40分間2本のフリー走行を終了。1本目が1'50.365で8番手、2本目が1'49.422で7番手と、新しいスイングアーム、タイヤを装着しながらの走行としては、上出来と言えた。特にフリー走行1本目では、様子を見ながらでも3周目には51秒台へ入れ、そのままピットへ入らずに6周目にこのセッションベストとなる 1'50.365を出すことができた。走り出しとしては、十分な手応えを感じるセッションとなったのは間違いない。
予選日となる土曜日から、いよいよフォーミュラカーが走り出す。JSB1000クラスの予選は12時45分から40分間。気温は34度まで上がり、それに伴って路面温度も50度を超えるコンディションとなった。また天気予報では昼から雨が降ると予想されていたが、結果的には太陽も顔を出し、気温がどんどん上がっていく中での予選となった。
長島選手はコースインし、2周目に1'50.434と50秒台へ入れると、そこから3周連続して50秒台でラップ。ピットインし、9周目に1'49.784、10周目1'49.523と続けて49秒台で走り、12周目にも49秒台をマーク。10周目のタイムが予選タイムとなり、決勝は3列目7番手からスタートすることとなった。
この日の夕方にはもてぎのコース上を雷雨が通過。激しい雨により、コース上のゴムが流される。この影響がどのように出るのか、日曜日のコンディションに注目された。
【決勝レース】
日曜日は午前中から雨予報とされたが、雲が多いものの、雨が降りそうな気配はない。ウォームアップ走行が始まる8時半のコンディションは、気温28度、路面温度は35度(いずれも手元計測)と、前日までの暑さではない。20分間のこのセッションで長島選手は順調にタイムを上げ、1'49.293で5番手に付けた。
その後、太陽が出てくる状況となり、雨の心配はなくなったが、フィーミュラの走行も行われ、前日に近い路面コンディションになりそうな流れとなった。
12時40分に20周でレースはスタート。長島選手は6番手あたりで1コーナーに飛び込み、2コーナー立ち上がりまでに1台パスして5番手に上がる。トップグループは4台。何とかそこに加わりたいところだが、V字コーナーで津田拓也選手がインに飛び込んできて、なんとか抑えたものの、接触寸前のテールtoノーズ状態。その後、津田選手にパスされ、1周目を6番手でメインスタンド前に戻ってくる。やはり気温上昇による路面温度、さらにフォーミュラカーのタイヤのゴムが路面に載り、懸念していた予選同様のコンディションとなってしまった。津田選手から徐々に離れ、後続の高橋 巧選手、名越哲平選手と3台での6位争いになり、なんとか6位を死守しようとトライしていた9周目、長島選手に対してオレンジボールが提示されてしまい、これを確認してすぐ1コーナーでアウトに出てマシンを止め、ここでレースは終了となってしまった。
車検場へマシンを持ち込み、白煙が出ていたということでその原因を確認してもらったが、何の異常も発見出来ない。さらにマシンをピットへ戻してチームスタッフによるチェックを行った結果、オイルフィルターのOリングにクラックが入り、その場所がちょうどマフラーの上だったことから、圧力がかかってにじんだオイルがマフラーに落ち、熱で蒸発し白煙が上がってしまったようだ。チームはその部分にクラックが入りやすいことは確認しており、決勝日も新品に交換し、当然のことながらワイヤーロックも施していたが、最悪のタイミングでクラックが入ってしまったのだった。
(追加説明:使用しているオイルフィルターは開発を兼ねたもので、X断面タイプのシール(Xリング)を使用しており、Xリングの材質やサイズについても開発データを採取している開発試作品でした。開発の目的は、JSBクラスで使用しているカーボンニュートラル燃料がエンジンオイルを希釈し、シール関係の耐久性に影響を与える事象が確認されたため、その対策やより高い耐久性確保を狙ってのアプローチでした。チームも開発試作品ということで、細心の注意を払い使用していましたが、今回結果としてXリングの2箇所にクラックが入ったことにより、微量ではありましたがオイルが漏れるという結果になりました)
また、中冨選手は13位、星野選手は12位走行中に他者と接触して転倒、リタイアとなった。
コメント
長島 哲太
新しいスイングアームが入り、このインターバルで造り上げてきた新型タイヤの感触も良かったのですが、開幕戦の鈴鹿2&4同様、フォーミュラカーのタイヤのゴムの影響は大きく、スタートしてすぐに、思うようなグリップが出ていないことが分かりました。とにかく置かれた状況の中でベストを尽くそうとトライし、1分50秒台前半をキープしていたのですが、オレンジボールが自分に対して出されてしまい、そこでレースを止めなければいけなくなってしまいました。残念ではありますが、タイヤの開発は着実に進化していますし、新しいスイングアームが付いたことで、車体セッティングの幅も大きく広がり、旋回も今までとは経験したことのないような鋭さが出ています。得てして新しい部品というのはメリットも当然出る反面、何らかの問題も出るものなのですが、光島さんと藤沢さんの綿密なやり取りの中から出来てきたスイングアームらしく、一作目なのに非常に完成度の高いものとなっています。この新しい武器の性能もフルに発揮させ、良いタイヤを造ってレースでも早く表彰台に立てるように頑張りたいと思います。引き続き応援、よろしくお願いします。
ダンロップ開発グループ 芝本 昇平
鈴鹿、オートポリス、岡山国際とこのインターバルでテストを行いましたが、レースという点で言うと、前回のSUGOから構造、ゴム、形状を変更してこのもてぎに持ち込みました。現在開発は、リアタイヤを中心に行っています。開発のいちばんのねらいは、コーナー立ち上がりでのアクセルを開けたところの加速力というか、そこで路面をしっかり蹴ってくれるようにしたい、という部分です。とは言え、プライベートテストも行ってはいますが、十分な走行時間が取れるわけではないので、PC上でのシミュレーションを多角的に行いながら、ある程度の方向性をそこで見ながら新しいタイヤを造り、実走で確認するという流れになっています。ただし今回のレースに関して言うと、チーム側が新型のスイングアームを投入したということで、そのシェイクダウンの時間も必要でしたし、2&4ということでフォーミュラカーのタイヤのゴムが路面に擦り付けられてしまうことによる影響というのもとても大きく、新型タイヤの評価ができるレベルの走行は出来ませんでした。ですからその部分に関しては、オートポリスでの事前テストの最初に行うテーマとなります。
中冨 伸一
今回持ち込んでくれたタイヤはすごく安定した性能を発揮してくれて、金曜日から着実なセットアップを進めることが出来ました。いつもは開発用タイヤのテストが何本も入り、マシンのセットアップまで進めることがなかなか難しいのですが、今回はそうした作業も少なく、レースへ向けた準備を進めることが出来ました。レースもラストラップに1台パスし、13位でポイント獲得が果たせたので良かったです。上位陣の脱落があってのポイント獲得という側面はありますが、やはりレースを走り切ってその位置を得たというのは自信になりますよね。この流れで、さらに良いタイヤを開発していきたいと思います。
星野 知也
今回ダンロップが用意してくれたタイヤは鈴鹿8耐でBMWのファクトリーチームが使ったものと同じ、ということでした。この第5戦は高温下でのレースということもあり、鈴鹿8耐で5位という実績のあるもので、実際に金曜から走り出してとてもフィーリングが良かったです。パッと乗ってすぐ1分51秒台に入りましたし、金曜日は良かったのですが、土曜日の予選は気温が想像以上に上がったことと、フォーミュラカーがこの日から走り始めたのでその影響が大きく、21番手とちょっと沈んでしまいました。決勝は予選日ほど気温も上がらず、土曜夜の雷雨がフォーミュラカーの路面に張り付いたゴムを流してくれたからなのか、決勝では金曜日のフィーリングが戻り、想定していた1分51秒台でラップ出来ていたのですが、接触して転倒となってしまい、結果は残念でした、でもすごく良いフィーリングで走ることが出来たので、このリズムで後半戦を戦いたいと思います。
JSB1000 レース1Result
順位 | 選手名 | チーム | メーカー | タイム | |
1位 | 水野 涼 | DUCATI Team KAGAYAMA | DUCATI | 36'18.184 | |
2位 | 中須賀 克行 | YAMAHA FACTORY RACING TEAM | YAMAHA | 36'22.319 | |
3位 | 岡本 裕生 | YAMAHA FACTORY RACING TEAM | YAMAHA | 36'23.568 | |
4位 | 野佐根 航汰 | Astemo HondaDream SI Racing | HONDA | 36'40.609 | |
5位 | 津田 拓也 | AutoRace Ube Racing Team | SUZUKI | 36'44.598 | |
6位 | 高橋 巧 | JAPAN POST HondaDream TP | HONDA | 36'50.422 | |
13位 | 中冨 伸一 | RSN | YAMAHA | 37'42.552 | |
リタイア | 長島 哲太 | DUNLOP Racing Team with YAHAGI | HONDA | - | |
リタイア | 星野 知也 | TONE RT SYNCEDGE4413 BMW | BMW | - |