JSB1000

天気に翻弄された全日本ロードレース第5戦

全日本ロードレース選手権第5戦が9月13日・14日に大分県・オートポリスで行われた。オートポリスは全長4.2km、高低差は52メートル、最大上り勾配7.2%、下り勾配10%とアップダウンが激しく、さらに中・高速コーナーが連続することから、タイヤへ高い荷重が掛かるコースである。
レース開催1週間前にテスト走行が行われ、初日はドライコンディションの中、長島哲太選手は3回のセッションでトータル83周し、ベストタイムは1’50.944で10番手に付けた。

二日目はウエットコンディションとなり、路面コンディションも不安定なことから多くのライダーが走行をキャンセル。長島選手も走行せず、二日間のテストを終えた。 長島選手はこのテスト後、HRCのテストのためにポルトガルへ飛び、翌週のレース直前に帰国するハードスケジュール。 当初の予定ではレースウイークが始まる前の9月12日木曜日午後にオートポリス入りするはずだった長島選手だが、ヨーロッパからの便が遅れ、さらに日本国内も天候不順により、羽田空港から熊本に向かった飛行機は途中で引き返し、結果的に関西空港へ着陸。金曜日早朝の新幹線で熊本へ向かうこととなった。 このため、金曜日1本目のフリー走行は間に合わず、2回目のセッションが始まる20分前にやっとサーキットに着くという、慌ただしいレースウイークスタートとなってしまった。ライバル勢に対して準備面で少し遅れを取ってしまったが、着実にタイムを詰めて計測12周目には1分49秒921と49秒台へ入れ、このタイムでレースウイークのテスト走行を6番手に付けた。

9月に入ってから秋雨前線が九州から本州上に停滞、その南側となる九州地方は暖かい空気が流れ込む影響で大気の状態が不安定になっていた。そのため、レースが行われる週末は雨になる可能性が高いと報じられていた。実際にレースウイークが始まる直前となる木曜の昼間は晴れていたが、夜に激しい雨が降り、不安定な天気となっていた。長島選手が羽田から熊本にたどり着けなかったのも、その影響によるものだった。
土曜日は朝から厚い雲が空を覆う。そんな中、午前10時10分から30分間にわたって予選が行われた。長島選手は計測1周目に1’50.511と50秒台へ入れ、その後も連続して50秒台でラップ。一度ピットインし、再びタイムアタック。8周目に1’49.840をマークし、このタイムで第1レース、第2レースともに8番手からスタートすることとなった。

午後の決勝は、1時55分から10周でJP250が行われ、その後15周でJSB1000クラスのレース1が行われるはずだった。しかしJP250のレース終盤に雨が降り出し、赤旗中断。レースはそのまま成立となった。その後に雨は止み、風も強めに吹いていることもあって路面はどんどん乾いていく。ウエット宣言は出されていたものの、結果的に全車スリックタイヤを装着してJSB1000のレースはスタートした。 長島選手はまずまずのスタートを切り、8番手あたりで1コーナーに入る。その後、得意の鋭いコーナーへの飛び込みによって第1ヘアピンで5番手にポジションアップ。しかし第2ヘアピン入口でラインを外してしまい、8番手まで順位を落としてしまう。1分50秒から49秒台へタイムを上げていくトップグループに対し、長島選手は1分50秒後半から51秒台というペースのため、その差を詰められない。そのため、このレースは7位でチェッカーとなった

日曜早朝には九州から本州にかけて線状降水帯が発生、その影響でサーキットは朝から強い雨と霧に覆われてしまう。当初は朝8時からウォームアップ走行が予定されていたが、早々に1時間ディレイが発表された。その後、J-GP3、ST600クラスの2つのレースはキャンセルされ、全クラスのレース開催が危ぶまれたが、正午をすぎるころから天気が一気に回復。霧が晴れ、太陽も顔を出し、コンディションは一気に良好な状態になっていく。このため、JSB1000クラスのレース2は開催できることになった。朝のウォームアップ走行が無かったことから、レース前に5分間のウォームアップ走行時間が設けられ、14時20分に全車スリックタイヤを装着して12周の決勝がスタート。5分間のウォームアップ走行は、路面がまだ所々濡れているコンディションだったが、長島選手はスリックタイヤで走行。1’55.208のタイムで総合トップに立つ速さを見せ、決勝への期待が高まった。スタートするとその期待通り、1コーナーを5番手で立ち上がる。第2ヘアピンまでに4位へポジションを上げ、さらに2周目には3位へ浮上する。前を走る2台は1分48秒台から49秒台で走るのに対し、長島選手は1分49秒後半から50秒台。このため、トップ争いからは離されてしまうが、レース序盤のペースが良いことから4位以降を少し離して単独の3位走行に持ち込んでいく。しかし4周目に長島選手が1分50秒台後半へタイムが下がるのに対し、4位集団が1分50秒前半から49秒台へ上げてくる、そのため7周目には7位まで順位を落としてしまう。しかし8周目に1台をパスし、そのまま6位でゴールした

ライダーコメント

長島哲太選手(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)

レースウイークに入るところでバタバタして、それは事前にある程度覚悟していたのですが、金曜日のFP1を走れなかったのは、結果的に準備不足になってしまいましたね。でもチームがしっかり準備をしてくれていたので、ある程度はカバーできたと思います。レース1はスタートして第2ヘアピン入口でギア抜けしてしまい、オーバーランしそうになって順位を落としてしまいました。前との差も開いてしまったので、そこからはアベレージをどうやったら高いレベルで刻めるか考えながら走りました。結果的に1分50秒後半というアベレージを、最初から最後まで刻みながら淡々と走った、というのがレース1でしたね。もてぎはストップアンドゴーのコースなので、そのストップの間にリアのスライドを使ったり、ブロックラインをうまく使えば自分たちの持っているものを武器にして戦えたのですが、このオートポリスのコースは、長い時間曲がるようなコーナーや、寝かしながらアクセルを開けていくような場所が多く、リアタイヤに対する負担が大きいので、少し自分たちの現状だと厳しい面がありましたね。旋回性という部分で、他のライダーと違うラインを通らないといけなかったりするので、勝負するという点では苦しかったです。とは言え、ライダーの仕事というのは与えられたものをどう使い、どう結果に繋げていくかだと思うし、とにかく今は、現状のパッケージングを最大限活かして得られるベストリザルトが出せるよう、努力を続けています。またこれからヨーロッパへ戻ってテストをし、岡山国際サーキットでの事前テスト直前に戻ってきます。

星野知也選手(TONE RT SYNCEDGE4413 BMW)

前回のもてぎのレースで使ったタイヤの改良版を事前テスト、さらにレースウイークとダンロップに持ち込んでもらい、テストをしながらレース1、レース2を走りました。もてぎで感じたネガティブな面を改修してもらったタイヤが良いフィーリングで、テストから調子が良かったのですが、レースウイークに入ってからは路面温度の低さに少し対応できず、レース1はハード系でレースに臨んだのですが、レース後半から厳しくなりました。レース2はウエットからドライへ路面が乾いていく状況だったのでミディアムを選択しましたが、車体を合わせきれませんでした。ただベースは良いレベルに仕上がってきているので、さらにこの方向でうまく進めていければと思っています。

中冨伸一選手(RSN)

事前テストではいろいろな種類のタイヤをテストして、開発のベースとなる部分の選別を行いました。レースウイークは、それとはまた別のタイヤ選択を行いながら、セッションを進めました。レース1、レース2とコンディションが大きく違い、そこで評価テストができたというのは開発作業をする中では、貴重な機会となります。2レースとも同じタイヤを履いて、レース2は路温が低いのでエア圧を調整して出たのですが、それが思うような結果を得られず、それも貴重なデータになりました。

住友ゴム工業株式会社 タイヤ事業本部 技術本部 第二技術部 芝本昇平

前戦のもてぎ大会のレース2では、皆さんにタイヤの進化を感じてもらえる戦いができたと思いますが、実際にはライダーのスキルに助けられていた部分もありました。今回のオートポリスのコースは旋回している時間が長く、中・高速コーナーではライダーの操作が限られるため、旋回への課題が出ると考えて取り組んできました。レースウイーク中の戦いを通じ、更なる進化が必要であると実感でき、前戦もてぎからオートポリスを経て、タイヤの進化している部分とまだ足りていない部分が明確に見えてきたと思います。今年の残り2戦、そして来年に向けて開発を継続していきます。


JSB1000 RACE1Result

順位 選手名 チーム メーカー タイム
1位 中須賀克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM YAMAHA 27'32.106
2位 野佐根航汰 Astemo Pro Honda SI Racing HONDA 27'40.729
3位 津田拓也 Team SUZUKI CN CHALLENGE SUZUKI 27'41.053
4位 岩田 悟 Team ATJ HONDA 27'41.252
5位 伊藤和樹 HONDA Dream RT SAKURAI HONDA HONDA 27'42.055
6位 鈴木光来 Team ATJ HONDA 27'46.638
7位 長島哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI HONDA 27'56.281 Dunlop ユーザー
12位 星野知也 TONE RT SYNCEDGE4413 BMW BMW 28'26.602 Dunlop ユーザー
13位 中富伸一 RSN YAMAHA 28'28.274 Dunlop ユーザー

JSB1000 RACE2Result

順位 選手名 チーム メーカー タイム
1位 中須賀克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM YAMAHA 21'54.287
2位 野佐根航汰 Astemo Pro Honda SI Racing HONDA 22'02.070
3位 伊藤和樹 HONDA Dream RT SAKURAI HONDA 22'03.308
4位 水野 涼 DUCATI Team KAGAYAMA DUCATI 22'03.697
5位 鈴木光来 Team ATJ HONDA 22'05.612
6位 長島哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI HONDA 22'10.142 Dunlop ユーザー
12位 星野知也 TONE RT SYNCEDGE4413 BMW BMW 22'40.032 Dunlop ユーザー
13位 中富伸一 RSN YAMAHA 22'40.092 Dunlop ユーザー