JSB1000
長島選手、プロジェクト開始後初の3位表彰台を獲得!

全日本ロードレース選手権第6戦が、岡山県・岡山国際サーキットで10月4日・5日に開催された。このコースでの全日本開催は年1回。そのため、1週間前に事前テストが行われた。
9月末以降、秋雨前線が日本列島に停滞し、不安定な天候が続いており、事前テスト、さらにはレースウイークも天気に悩まされることとなった。
長島選手は前戦オートポリス終了後、ポルトガルに渡航してHRCのテストに参加。それをこなし、帰国してすぐに岡山入りするというハードスケジュールが続いていた。
事前テスト初日はドライ。1本目を長島選手は19周し、1’32.182のタイムで4番手に付けた。2本目は13周して1’31.795がベストで4番手、3本目は2時間と長いセッションだったこともあり、42周して1’31.491がベストとなり、3番手と初日から上位に付けてみせた。この日の気温は24〜25度、路面温度は27〜32度と比較的涼しいコンディションだった。
二日目もドライコンディション。1本目を22周し、ベストが1’31.145で2番手に付けた。午後は決勝を見据えた24周のロングランも敢行。ベストタイムは5周目の1’31.492で、安定して1分31秒中盤から32秒前半でラップ。全体でも4番手につけた。
レースウイーク前の天気予報では、土曜日がウェットになりそうだが、金曜と決勝日の日曜日はドライになりそうと伝えられていた。しかし実際には、秋雨前線と低気圧の活動が活発になり、金曜日は朝から雨となってしまった。
金曜1本目のフリー走行を長島選手は13周し、ラストラップに1’47.459のタイムをマークして8番手でスタート。2本目もウェットコンディションの中、1回のピットインを挟んで18周し、1’47.484のタイムで6番手となった。
土曜日は予選日。予選はノックアウト方式で、最初に35分間のQ1が行われ、上位10台が15分間のQ2に進む。Q1は13時25分から、気温20度・路面温度24度と肌寒いコンディションでスタートした。
長島選手は計測1周目に1’59.855と、いち早く2分を切るタイムを出して2番手に付ける。5周目に1’51.688とタイムを上げ、さらに14周目に1’46.869を記録して4番手でQ2進出を果たした。
続くQ2は雨が止み、路面の水量が少なくなる中で行われた。長島選手は3周目に1’47.151で5番手、7周目に1’44.828を出し、このタイムでセカンドロウ4番手のスターティンググリッドを獲得した。
日曜日は曇りの予報で、関係者の焦点は「いつ雨が止むか」という点に集まった。実際には朝まで雨が降り続き、一度止んだものの、朝8時過ぎにまた小雨がぱらつき、全クラスのウォームアップ走行は完全なウェットで行われた。気温・路面温度ともに23度と低めのコンディション。
長島選手は8周目に1’45.757をマークし、2番手でセッションを終えた。
その後、太陽が顔を出し、雲も晴れて青空に。この日最初のレースとなるJ-GP3クラスから、全クラスがドライタイヤで行われるコンディションとなった。
JSB1000クラスの決勝は当初13時50分スタート予定だったが、施設内でのアクシデントによりヘリコプター搬送が必要となり、レースは1時間ディレイ。14時47分から24周でスタートした。気温は28度まで上がり、路面温度も40度に達した。
長島選手はいつものスタートダッシュを決め、2番手で1コーナーへ。その後のリボルバーコーナーで先頭マシンのインに飛び込みトップに立つ。2周目のパイパーコーナーで中須賀克行選手(YAMAHA)にパスされ2番手へ。そこから中須賀選手は1分31秒台中盤までペースを上げ、長島選手以降は1分32秒前半での走行となったため、その差は徐々に広がる。2位争いは長島選手、野佐根航汰選手(Honda)、水野涼選手(DUCATI)の三つ巴となるが、長島選手が1分32秒前半でラップを刻み続けたため水野選手が離れ、野佐根選手との一騎打ちへ。
0.2秒という僅差でラップを重ねる両者。22周目のヘアピン入口で野佐根選手が前に出る。しかし長島選手は離されることなく、背後で再び前に出るチャンスをうかがう。迎えたラストラップ、MCシケインで転倒車両がコース上に残ってしまい、赤旗中断。レースはそのまま成立となり、長島選手はこのプロジェクト発足後、初の3位表彰台を獲得した。
ライダーコメント
長島哲太選手(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)
早く見たいと願っていた表彰台からの景色は、感慨深かったですね。グランプリから日本に戻ってきてJSB1000クラスに初めて参戦し、レベルが高いのは分かっていた中で、ダンロップタイヤの開発という選択をしました。昨年の開幕からいいレースができている一方で、課題は明確になるものの結果に繋げられず、もどかしくて何度も心が折れそうになりました。でも今年に入ってから課題に対して明確な改善が図れるようになり、レースのたびにタイヤが着実にアップデートされていき、その結果が今日の3位表彰台に繋がったと感じています。
開発が本当に前に進んでいるのか、自分の技術を含め正しい方向に向かっているのか迷うこともありましたが、こうした結果が残せたことで、ダンロップにとっても、自分にとっても自信になりました。
テストの段階からドライ用タイヤを絞り込めていましたし、ロングランでタイヤの落ち具合も確認済みでした。中須賀さんは非常に高いレベルにいることは分かっていたので、何とか逃さないようにと意識していました。結果的に2位争いとなり、ライバルを前に出すと自分の強みが出せなくなるため、前でポジションを守ることを意識しました。
最終戦鈴鹿は厳しい戦いになると思いますが、今回同様、全力で戦って問題点をさらに明確にし、その後の開発を加速させたいと思います。まずは表彰台に上がれてホッとしています。
星野知也選手(TONE RT SYNCEDGE4413 BMW)
今回も耐久に向けたハード用タイヤの開発を担当しました。事前テストは路面温度が高くないコンディションだったので、その状況で機能しそうなタイヤを中心にテストしました。グリップと旋回性のバランスが良く、自分好みのタイヤで、ドライ路面での自己ベストを更新できました。
テスト3日目(実質2日目)は雨となり、市販ベースのレインタイヤをテスト。レースウイークに入ってからも金曜・土曜がウェットとなり、市販レインを中心に走行しました。特に予選Q1では市販レインで5番手となりQ2進出を果たせたのは、開発の成果だと思います。
決勝が急にドライとなった中でも10位でゴールでき、今年この時点で31ポイントを獲得し、ランキング12位につけているのは大きな飛躍だと感じています。この流れのまま、さらにタイヤ開発を進めたいと思います。
中冨伸一選手(RSN)
事前テスト、レースウイークともに雨が多く、タイヤ開発以前にマシン側のセットアップが進まず苦戦しました。ヤマハ勢全体を見てもウェットでは今ひとつ結果が出せず、ファクトリーチーム以外は苦労していました。
自分はタイヤ開発の初期段階で方向性を見極めて選別するのが主な仕事ですが、事前テスト・レースウイークともにマシン側の問題があり、ライディングのフィーリングとしては今一つでした。
それでも同じダンロップタイヤの開発に携わる長島選手が3位表彰台を獲得したのは嬉しい結果です。そこに少しでも自分の仕事が貢献できているなら本当に嬉しいですね。
住友ゴム工業株式会社 タイヤ事業本部 技術本部 第二技術部 芝本昇平
事前テスト(ドライ)には、コンパウンド違いのフロントタイヤを数種類、リアに関しては、もてぎ、オートポリスで使用したタイヤをベースに構造開発を行った仕様を、こちらも数種類持ち込みました。事前テストの初日は岡山国際サーキットに合わせたフロントタイヤの選択から始まり、2枠目以降はリアタイヤのテストに移行しました。リアタイヤに関しては、フィーリングの良いタイヤがありましたので、二日目の1枠目に再テストを行い、その中でベストの仕様を2枠目のロングランに使用しました。
レースウイーク初日のフリー走行(ウェット)では、JSB用の開発品として構造違いとコンパウンド違いを数種類用意し、その評価を進めました。予選のQ1では最初に、ST1000のフリープラクティスで好タイムが出ていたことと、雨の基準セッティングのためにチームへ依頼し、ST1000のウェットタイヤを供給することになりました。ですが、ST車両とJSB車両ではタイヤへの荷重が異なっており、結果的には好タイムにつながりませんでした。また、JSB開発品レインはまだ課題がありつつも、タイヤのフィーリングが最も良く、そのタイヤを軸に車体のセットアップとライダーの適応を進めていきました。長島選手がダンロップのレインタイヤで走行したのは数回しかありません。また、雨量やコース状況の違いによってタイヤの評価が大きく変わってきますので、比較的安定してテストを実施できるスリックタイヤと比べて、レインタイヤは安定した開発を行う難しさを感じます。
決勝のウォームアップ時点で、決勝レースはドライコンディションとなることがほぼ確実だったので、日曜のウォームアップ走行(ウェット)では、金曜日の走行と予選で発見したレインタイヤの課題の再確認とレインコンディションでのデータ収集に努めました。結果、次回レインタイヤを使用する際に有効なデータを得られました。
決勝(ドライ)は、今回投入した仕様の一番の進化を、コーナー進入と立ち上がりの安定感で感じることができました。現状、もてぎや岡山などのストップ&ゴーが主体のサーキットでは安定した性能を発揮しています、今後は鈴鹿などの高速コーナーへの対応が課題となると考えています。そのため、次戦鈴鹿レースにて新仕様のリアタイヤをテストする予定です。
今回の3位表彰台獲得は、昨年からの開発の成果が目に見える結果として現れたことを非常に嬉しく思います。長島選手とチーム、関係者の方々が一丸となって取り組んできた成果がやっと実ってきたと感じています。ただ今回、2位が見える位置にあるものの届かなかった悔しさもありますし、チャンピオンを獲得するにはさらにその先のトップを追い越さなければならないと改めて実感しました。
来年に万全の状態で挑むため、最終戦鈴鹿をしっかりと戦い、さらに開発を加速させます。
JSB1000Result
順位 | 選手名 | チーム | メーカー | タイム | |
---|---|---|---|---|---|
1位 | 中須賀克行 | YAMAHA FACTORY RACING TEAM | YAMAHA | 33'44.465 | |
2位 | 野佐根航汰 | Astemo Pro Honda SI Racing | HONDA | 33'57.697 | |
3位 | 長島哲太 | DUNLOP Racing Team with YAHAGI | HONDA | 33'57.976 | ![]() |
4位 | 水野 涼 | DUATI Team KAGAYAMA | DUCATI | 1'32.165 | |
5位 | 津田拓也 | Team SUZUKI CN CHALLENGE | SUZUKI | 34'05.810 | |
6位 | 伊藤和樹 | HONDA Dream RT SAKURAI HONDA | HONDA | 34'18.290 | |
10位 | 星野知也 | TONE RT SYNCEDGE4413 BMW | BMW | 34'51.971 | ![]() |
13位 | 中富伸一 | RSN | YAMAHA | 35'10.640 | ![]() |
JSB1000Point
順位 | 選手名 | チーム | メーカー | ポイント | |
1位 | 中須賀 克行 | YAMAHA FACTORY RACING TEAM | YAMAHA | 185.0 pt | |
2位 | 野左根 航汰 | Astemo Pro Honda SI Racing | HONDA | 91.0 pt. | |
3位 | 伊藤 和輝 | Honda Dream RT SAKURAI HONDA | HONDA | 90.0 pt. | |
4位 | 浦本 修充 | AutoRace Ube Racing Team | BMW | 86.0 pt. | |
5位 | 津田 拓也 | Team SUZUKI CN CHALLENGE | SUZUKI | 86.0 pt. | |
6位 | 水野 涼 | DUCATI Team KAGAYAMA | DUCATI | 85.0 pt. | |
8位 | 長島哲太 | DUNLOP Racing Team with YAHAGI | HONDA | 70.0 pt | ![]() |