JSB1000
雨に翻弄されたJSB1000クラス
例年、この最終戦では事前テストは行われず、代わりに木曜日に特別スポーツ走行が設けられる。 今年もそのためにレースウイークは10月23日(木)からスタートした。
この週末は、本州南の海上に停滞する秋雨前線の影響で、天候が不安定になることが天気予報でアナウンスされていた。 搬入日の水曜日は雨で気温が低かったが、一転して木曜日は朝から晴れた。ただ、週末にかけては再び雨の確率が高かった。 そのため、ダンロップ技術陣はレイン、ドライともに対応できるよう準備を進め、木曜・金曜のフリー走行はドライコンディションの可能性が高かったことから、スリックタイヤのテストを計画した。 予選以降もドライ、レイン両路面に対応できるように体制を整え、サーキット入りした。
木曜日1本目の走行は9時35分から40分間行われた。前夜までの雨が路面にわずかに残るコンディションで、気温18度、路面温度22度と肌寒さを感じる中での走行となった。 長島選手は計測1周目を2’15.754、2周目2’13.608、3周目2’12.041とマシンとコンディションを確認しながら走行。4周目に2’10.801とペースを上げ、このセッションは8番手で終えた。 2回目の走行は13時55分から30分間。気温は20度、路面温度は33度となり、路面は完全にドライだった。 長島選手は計測1周目が2’10.126、2周目2’08.874とペースを上げ、その後ピットインしてセットアップを行った。 このセッションのベストタイムは6周目に出した2’08.132で、全体で7番手を記録した。 この日は午前中のセッションが微妙な路面コンディションだったため、1本目は車体の確認を行い、2本目で現行の基準タイヤの確認と車体セットアップをさらに進めることとなった。
金曜日は終日曇り。1本目の走行は9時35分から39分間。気温は22度、路面温度は19度と気温を下回る。 このセッションでは計測1周目を2’10.542というタイムで走り、そこから2分9秒台、8秒台とペースアップ。 全11周を走行し、最後に出した2’07.493のタイムがベストとなり7番手につけた。 2本目は13時45分から40分間、気温20度、路面温度26度というコンディションでスタート。開始直後にセーフティカーシミュレーションが行われながら走行した。 長島選手は計測2周目に2’06.932とこのウイーク初の6秒台に突入すると、連続して6秒台ラップを記録。 1回ピットイン後、さらに2ラップで2分6秒台をマーク。このセッションのベストタイムは9周目に記録した2’06.712で、全体で6番手となった。 タイヤ開発作業としては、鈴鹿サーキット特有の高荷重コーナーに対応するための新しいリアタイヤをテストし、予選・決勝がドライ路面となった場合の選択を進めた。
土曜日の走行とレース1
土曜日は9時35分から40分間の計時予選が行われ、続いて13時30分から14周のレース1が開催された。 天気予報が報じていた不安定な天候は現実となり、金曜夜に降り出した雨が朝まで残ったため、予選はハーフウエットから路面が徐々に乾いていく難しいコンディションの中で実施された。 気温20度、路面温度19度と低め。 ダンロップのエンジニアは、前日の走行でフィーリングの良かったタイヤを前後2セット準備し、路面コンディションを観察しながら出走タイミングを調整した。 長島選手は2分10秒台で走行しながら路面状況を確認し、さらに2分8秒台へペースを上げたところでピットイン。 乾いていく路面に合わせてセットアップを行い、6周目に2’06.748と2分6秒台へ突入。さらに2’06.714までタイムを更新した。 このタイムがベストとなり、レース1は6番グリッド、レース2は5番グリッドからスタートすることとなった。
________________________________________
レース1:雨に翻弄される展開
午後になると雨がぱらつき始め、レース1は路面が完全にウエットにならない難しいコンディションでスタート。 ダンロップのエンジニアは予選で使用したスリックタイヤに加え、バックアップとして前戦岡山で実績のあるレインタイヤも用意していた。 気温20度、路面温度21度と低め。まだドライ寄りの路面だったことから、長島選手はサイティングラップをドライタイヤで走行したが、スタート直前に雨量が増したため、グリッド上で急遽レインタイヤに交換して臨んだ。 レースがスタートすると、長島選手は1コーナーを3番手で飛び込み、前の2台に続いた。1周目を3位でメインストレートに戻ってきたが、その後NIPPOコーナーで1台、さらにヘアピンで1台にパスされ5位へ順位を落とす。 6台による3位争いの中で、前に出るチャンスをうかがった。 このグループのペースが2分21〜22秒台であるのに対し、長島選手は2分21〜20秒台と良いため、3周目のスプーン入口で4位に浮上。その後再び抜かれる場面もあったが、すぐに抜き返し、6周目には3位に上がった。 しかし、9周目のシケイン入口でわずかにラインを外し、5位にポジションダウン。 雨が強まる中、2分20〜19秒台にペースを上げていた12周目、S字で転倒。 レースは14周目に入るところで赤旗中断となり、12周で成立。長島選手は14位完走となった。
________________________________________
日曜日:ウォームアップ走行とレース2
日曜日も朝から雨。8時55分からウォームアップ走行が行われた。気温19度、路面温度22度。 このセッションでチームとダンロップエンジニアは、レース1で発生した課題に対し、タイヤ側で調整できる項目を試して確認を行った。 長島選手は1周目を2’32.004、2周目2’26.260とペースを上げて状態を確認。4周目に2’22.963、5周目2’22.602と連続22秒台を記録し、6番手のタイムでセッションを終えた。 レース1で起きた課題の原因推測も進み、収穫の多い走行となった。
________________________________________
レース2:トラブル発生か
レース2は13時40分から16周で行われた。気温21度、路面温度22度と朝のウォームアップ走行とほぼ同じコンディション。 レインタイヤを装着して3番手の位置でウォームアップ走行に出た長島選手だったが、スプーンコーナー2つ目で大きくスピードを落とし、リア周りを何度も確認する姿が中継映像に映し出された。 マシンに何らかのトラブルが発生したようで、レースではペースを上げられず、1周目11位、2周目14位と大きく順位を落としてしまう。 その後、セーフティカーが入る展開となり、レースは8周目に再スタート。 長島選手はここからペースを上げ、12周目に9位へ浮上。そのままのポジションでチェッカーを受けた。
ライダーコメント
長島哲太選手(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)
レース1、レース2ともに思うようなフィーリングが得られない中での走りとなってしまいました。 それでもレース1は表彰台が見える位置で戦えていたので、なんとかそこにたどり着こうとプッシュしていたら転倒してしまいました。 レース2はトラブルというほどではないと思うのですが、走り出してすぐにフィーリングが良くないことがわかり、我慢のレースになってしまいました。 原因はチームに探ってもらっていますが、まだわかっていません。不完全燃焼で最終戦が終わってしまったのはとても残念です。 しかし今シーズンはまず狙っていた表彰台に上がることができましたし、タイヤ開発も着実に進歩を遂げ、結果にもつながっているので良いシーズンだったと思います。 来年はいよいよ、このプロジェクトの集大成となる3シーズン目を迎えます。タイトル獲得のためには開幕戦から優勝を狙えるレベルで走り出す必要があります。 このシーズンオフもダンロップのエンジニア、チームスタッフみんなで協力して開発を進め、そのレベルで来季のスタートが切れるよう準備していきます。 今シーズンもたくさんの応援、ありがとうございました。本当に大きな力となりました。来年も引き続き応援をお願いいたします。
星野知也選手(TONE RT SYNCEDGE4413 BMW)
ドライに関しては今回も耐久用ハードタイヤの開発を進めました。前戦で感触の良かったタイヤのさらに進化版が持ち込まれ、ドライでは6年ぶりに自己ベストを更新することができて良かったですね。 ウエットに関してはST1000用の市販レインを使用しましたが、2レースともに雨量が多い中で、レース1・レース2ともに2分26〜25秒台というペースは悪くなかったと思います。 ただ、ライバル勢のウエットタイヤも良かったようで、相対的に見ると厳しい戦いになってしまいました。さらなる開発を進める必要性を感じたレースとなりました。
タイヤ事業本部 技術本部 第二技術部 芝本昇平
今回のレースウイークに持ち込んだタイヤは、フロントが今年後半戦から使用しているものをブラッシュアップしたタイプで、リアは高速コーナーの多い鈴鹿に対応するため、新しい構造とコンパウンドの数種類を準備して臨みました。 レインタイヤに関しては、雨量によってコンパウンドを選択できるよう、コンパウンド違いのタイヤを数種類持ち込みました。 結果的にレース1・レース2ともにレインタイヤで課題が発生する結果となりました。 昨年はテスト・レースともに晴天が多く、レインタイヤを使用する機会が少なかったこともあり、安定して開発を進めているスリックタイヤと比較すると、レインタイヤに関するデータが不足していると感じています。
JSB1000 レース1Result
| 順位 | 選手名 | チーム | メーカー | タイム | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 水野 涼 | DUCATI Team KAGAYAMA | DUCATI | 28'03.743 | |
| 2位 | 浦本修充 | AutoRace Ube Racing Team | BMW | 28'09.842 | |
| 3位 | 日浦大治郎 | Honda Dream RT SAKURAI HONDA | HONDA | 28'18.793 | |
| 4位 | 渥美 心 | Yoshimura SERT Motul | SUZUKI | 28'28.267 | |
| 5位 | 野佐根航汰 | Astemo Pro Honda SI Racing | HONDA | 28'28.968 | |
| 6位 | 岩田 悟 | Team ATJ | HONDA | 28'31.488 | |
| 14位 | 長島哲太 | DUNLOP Racing Team with YAHAGI | HONDA | 26'01.042 | |
| 16位 | 星野知也 | TONE Team4413 BMW | BMW | 29'08.528 | |
| 21位 | 中冨伸一 | RSN | YAMAHA | 29'03.392 |
JSB1000 レース2Result
| 順位 | 選手名 | チーム | メーカー | タイム | |
| 1位 | 水野 涼 | DUCATI Team KAGAYAMA | DUCATI | 41'44.126 | |
| 2位 | 浦本修充 | AutoRace Ube Racing Team | BMW | 41'52.400 | |
| 3位 | 野佐根航汰 | Astemo Pro Honda SI Racing | HONDA | 41'59.548 | |
| 4位 | 岩田 悟 | Team ATJ | HONDA | 42'03.803 | |
| 5位 | 阿部恵斗 | SDG Team HARC-PRO.Honda | HONDA | 42'06.123 | |
| 6位 | 日浦大治郎 | Honda Dream RT SAKURAI HONDA | HONDA | 42'16.120 | |
| 9位 | 長島哲太 | DUNLOP Racing Team with YAHAGI | HONDA | 42'34.012 | |
| 20位 | 星野知也 | TONE Team4413 BMW | BMW | 40'44.939 |