JSB1000
長島選手がレース1/2ともに3位表彰台
全日本ロードレース選手権第3戦が、5月30日・31日に大分県・オートポリスで開催された。阿蘇外輪山の北側、標高約800〜900mの高原地帯に位置するオートポリスは、晴天時にはヨーロッパのサーキットを思わせる美しい景観が広がる一方、山の気候ゆえに雲が発生しやすく、視界不良による走行キャンセルが最大の懸念材料となる。実際、前年の大会でも一部クラスが中止となっており、1週間前の事前テスト2日目も厚い雲に覆われ、すべてのセッションがキャンセルとなっていた。テスト初日は計3本のセッションが行われたが、3本目は小雨によるハーフウエット路面となったため、大半のライダーが走行を回避した。その中で長島哲太選手は、1本目に1分48秒854でトップタイムを記録し、2本目は1分48秒783で3番手につけ、3本目は2周のみを確認して事前テストを締めくくった。
【フリー走行・予選】
懸念された天候はレースウィークが近づくにつれて好転し、結果的に3日間とも天候に恵まれ、安定したドライ路面で全スケジュールを消化した。金曜日のフリー走行1本目は、前日の雨の影響で開始時に一部ウエットパッチが残る状況だった。長島選手は路面の回復を待ってコースインすると、計測3周目に1分49秒834で2番手につけ、10周目には1分49秒231までタイムを削って2番手でセッションを終えた。午後の2本目も序盤から2番手タイムをマークし、最終的に1分48秒993の4番手で初日を終えた。土曜日の予選は40分間で争われた。前日午後に比べ、気温21度、路面温度30度と、路面温度が10度も低いコンディションでスタート。長島選手は2周目に1分48秒628で3番手、翌周には1分48秒266へとタイムを縮めて2番手に浮上した。その後、残り13分で赤旗中断となり、最終的に長島選手はレース1を4番手、レース2を5番手グリッドからスタートすることとなった。
【レース1決勝】
土曜日の午後3時10分、レース1決勝が15周で行われた。強い日差しにより、気温25度、路面温度は49度まで上昇するタフなコンディションとなった。4番手スタートの長島選手は得意のロケットスタートを決め、3番手で1コーナーを通過すると、第1ヘアピン先の右コーナーで2位へ浮上する。さらにトップを狙って第2ヘアピンのインを突くも、オーバースピードで大回りとなり4番手へ後退した。しかし2周目の第2ヘアピンで3位へ復帰すると、3周目の1コーナー進入では3台が並ぶ死闘の中、最もイン側を突いた長島選手がトップを奪取し、レースを牽引し始める。5周目の1コーナーで、圧倒的なストレートスピードを誇る水野涼選手(DUCATI)が一瞬前に出るが、長島選手が得意のハードブレーキングで応戦する。しかし立ち上がりでラインを外してしまい、再び水野選手の先行を許した。ここから水野選手が1分48秒台へペースアップして独走態勢を築き、追う長島選手、野佐根航汰選手(HONDA)、中須賀克行選手(YAMAHA)の3台による2位グループが形成された。終盤、ペースの勝る中須賀選手が10周目に2位へ浮上すると、長島選手との差は1秒に拡大し、戦いは長島選手と野佐根選手による3位表彰台をかけた一騎打ちとなった。1000ccクラスとは思えない接近戦のまま迎えた最終ラップ、3コーナーで一度は野佐根選手に前に出られるも、直後の左コーナーで長島選手が意地の抜き返しを披露。そのままポジションを守り切り、3位表彰台を獲得した。
【ウォームアップ・レース2決勝】
レース2決勝は、他クラスの赤旗中断の影響でスタートが20分遅れとなった。コンディションは前日とほぼ同様だが、周回数は3周長い18周で争われた。スタートが切られると、長島選手が再び抜群の蹴り出しを見せてトップで1コーナーへ進入した。その後、第1ヘアピン先でかわされ2番手となるも、第2ヘアピンでインを鋭く差し返し、ラインを膨らませながらも立ち上がりでトップの座を死守した。序盤は1分49秒から50秒台のペースとなり、トップグループは7台の大集団に膨らんだ。しかし6周目、レース1の覇者である水野選手がトップに立つと、1分48秒台へペースを上げて集団の牽引を図る。これに追従した長島選手、野佐根選手、中須賀選手の4台が再びトップグループを形成し、水野選手が逃げる中で3台による激しい2位争いが勃発した。16周目の最終コーナー手前で長島選手が野佐根選手をパスするが、17周目の同じコーナーで中須賀選手にかわされる。しかし長島選手はホームストレートでスリップストリームを使い、極限のブレーキングで1コーナーへ飛び込み2位を奪い返した。3台がテール・トゥ・ノーズのまま運命のラストラップへ突入し、2位をキープしていた長島選手だったが、チェッカー直前で中須賀選手に逆転を許した。しかし、限界ギリギリの攻防を戦い抜き、2戦連続となる3位表彰台を掴み取った。
ライダーコメント
長島哲太選手(DUNLOP Racing Team with YAHAGI)
「ラップタイムが少しずつ改善され、トップとの差も着実に縮まってきています。データを見ると悔しい部分もありますが、開発を重ねてきた結果、ようやく本当に戦えるラインまで来られたと感じています。ただ、水野選手と中須賀選手はやはり一歩抜きん出て速く、レース1では特に、中須賀選手の前を走りながら『申し訳ない』と思いつつ、フロントの状態を確認しながらの走行でした。レース2はその中須賀選手の前でゴールできるかと思いましたが、甘くなかったですね。とは言え、自分としてはまったく手を抜いたわけでなく、全力で走った結果として抜かれてしまったので、悔しいですが納得しています。現状はこれが精一杯ではありますが、逆に言えば120パーセントの全力を出し切れたレースができたと胸を張って言える内容でもありました。夏場に向けてインターバルが開くぶん、次戦にはさらに進化したタイヤを持ち込めると思っています。さらにテストを重ねて良いタイヤを開発し、データを積み重ね、もっといいバトルができるよう全力で臨みます」と語った。
星野知也選手(TONE RT SYNCEDGE4413 BMW)
「レース1、レース2ともに想定通りの展開ではありましたが、自分より上位のライダーに対しては、ベストタイム・アベレージともにコンマ5秒ほど足りていないのが現状です。逆に、後ろの集団とは1秒ほどのマージンがあるため、終盤にいかに自分のペースをキープして後ろに食われないかだけを考えて走っていました。今回はテストから引き続き、自分が開発に関わっている方向性の今年のメインタイヤを使用しており、フィーリングとしては良い感じで使えています。ただ、ここオートポリスは高低差があってスピードレンジも高いため、タイヤへの負荷が非常に厳しいコースです。グリップ、チャタリング(マシンの跳ね)の抑制、そして加速という3つの要素をバランスよく両立させなければならず、タイヤが踏ん張る必要があります。その厳しい状況下でも、最低限、周回を重ねてペースをキープできるレベルにはなってきました。次の鈴鹿8耐に向けては少し不安な部分もありますが、ここを乗り切れたことは大きいです。現在のJSB1000クラスはコーナーも加速も全域で速くなければならないほどレベルが高く、この位置からさらに上を目指すには、何か大幅なアップデートが必要だと感じています。やりたいことは明確なので、タイヤのグリップや温度管理など、工夫を凝らしながら次に向けてさらに頑張っていきます」と振り返った。
中冨伸一選手(RSN)
「今回もテスト中心のレースウィークとなりましたが、チャタリング(マシンの跳ね)に悩まされ、我慢のレースが続いています。今年はレース以外での実走テストの機会が非常に少なく、試験機でのシミュレーションを実走で確認する形になっています。決勝日の朝に大きめのセット変更を行い、それが良い方向へ働きました。ただ、前のライダーを抜くポイントを作れず、抑え込まれたまま終わってしまいました。立ち上がりの蹴り出しが弱く、仕掛けようとしても自分だけが挙動を乱して離されてしまうという展開の繰り返しだったので、まずはこの蹴り出しの課題をクリアし、次に向かっていきたいです」と現状を述べた。
中野政秀(タイヤ事業本部 技術本部 第二技術部)
「オートポリスは旋回性能が重要なサーキットです。そのためフロントには旋回性能向上を狙った新構造タイヤを投入しました。リアについては、SUGOのレースで使用した仕様である程度のベースが作れていたため、温度レンジの異なる複数のコンパウンドを比較評価する計画で臨みました。天気予報でドライコンディションが見込めたのは初日の午前中のみ。1枠目から評価対象を絞り込んでテストを進めましたが、3枠目以降は雨でテストができず、予定していたすべての仕様を試すことはできませんでした。それでも限られた時間の中で、フロントの新構造のタイヤが狙いどおりの性能を発揮することを確認。リアはハードレンジとして開発したコンパウンドが現状、最も適した選択であると判断しました。今年は3年計画の最終年であり、結果が強く求められるシーズンです。昨年まではレースウィークにも新仕様のタイヤを投入し実戦評価を続けてきましたが、今年は確実に結果を積み上げることを最優先に、事前テストで確認したベストの仕様を固定してタイヤ性能を最大限に引き出すアプローチで臨みました。結果として、これまでダンロップタイヤが苦手としていたオートポリスでレース1・レース2ともに表彰台を獲得でき、これまでの開発の成果を示せたという手応えを感じています。一方で、ファクトリーマシンにあと一歩届かなかった悔しさも残っています。長島選手の丁寧なタイヤマネジメントがあってこその表彰台であり、本来であれば水野選手を追いかけたい場面でも我慢させてしまった部分は率直に認めなければなりません。次戦のもてぎは開幕戦で表彰台を獲得しており、現状のタイヤの強みを生かせるコースレイアウトだと考えています。ただし、8月の真夏レースは過酷な高温コンディションが予想されます。昨年はその環境下で耐久性に課題が出て苦しいレースになりました。同じ轍を踏まないよう、6月・7月に予定しているテストではタイヤ開発に加えて耐久性能の確認を重点的に進めていきます。しっかり準備を整え、優勝を狙える状態でもてぎに臨みたいと思います」と今後の展望を含めて詳細を語った。
JSB1000 レース1Result
| 順位 | 選手名 | チーム | メーカー | タイム | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 水野涼 | SDG DUCATI Team KAGAYAMA | DUCATI | 27'19.472 | |
| 2位 | 中須賀克行 | YAMAHA FACTORY RACING TEAM | YAMAHA | 27'20.178 | |
| 3位 | 長島哲太 | HONDA DUNLOP Racing Team with YAHAGI | HONDA | 27'24.634 | |
| 4位 | 野佐根航汰 | Astemo Pro Honda SI Racing | HONDA | 27'24.802 | |
| 5位 | 伊藤和樹 | Team SAKURAI HONDA | HONDA | 27'34.839 | |
| 6位 | 鈴木光来 | TeamATJ | HONDA | 27'35.094 | |
| 12位 | 星野知也 | TONE Team4413 BMW | BMW | 28'07.831 | |
| 14位 | 中冨伸一 | RSN | YAMAHA | 28'18.736 |
JSB1000 レース2Result
| 順位 | 選手名 | チーム | メーカー | タイム | |
| 1位 | 水野涼 | SDG DUCATI Team KAGAYAMA | DUCATI | 32'53.768 | |
| 2位 | 中須賀克行 | YAMAHA FACTORY RACING TEAM | YAMAHA | 33'56.129 | |
| 3位 | 長島哲太 | HONDA DUNLOP Racing Team with YAHAGI | HONDA | 33'56.252 | |
| 4位 | 野佐根航汰 | Astemo Pro Honda SI Racing | HONDA | 33'56.286 | |
| 5位 | 國井勇輝 | SDG Team HARC-PRO. | HONDA | 33'09.538 | |
| 6位 | 西村硝 | S-SPORTS SUZUKI | SUZUKI | 33'10.037 | |
| 12位 | 星野知也 | TONE Team4413 BMW | BMW | 33'40.800 | |
| 15位 | 中冨伸一 | RSN | YAMAHA | 34'02.526 |
JSB1000Point
| 順位 | 選手名 | ゼッケン | チーム / メーカー | ポイント | |
| 1位 | 水野 涼 | 88 | SDG DUCATI Team KAGAYAMA | 125.0 | |
| 2位 | 長島 哲太 | 45 | DUNLOP Racing Team with YAHAGI | 81.0 | |
| 3位 | 中須賀 克行 | 1 | YAMAHA FACTORY RACING TEAM | 80.0 | |
| 4位 | 野左根 航汰 | 4 | Astemo Pro Honda SI Racing | 68.0 | |
| 5位 | 國井 勇輝 | 92 | SDG Team HARC-PRO.Honda | 58.0 | |
| 6位 | 鈴木 光来 | 10 | TeamATJ | 42.0 |