JSB1000

長島哲太、首位を走り続け0秒100差の2位 DUNLOPが示した勝利への確かな進化

全日本ロードレース選手権第5戦が8月29日・30日、栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催された。
レースウイークは天候が安定せず、木曜日から日曜日までドライ、ハーフウェット、フルウェットと刻々と変化する難しいコンディションとなった。

【フリー走行・予選】

木曜日の特別スポーツ走行は午前と午後の2セッションが行われた。午前のセッションは一部に濡れた箇所が残るハーフウェットコンディション。DUNLOP Racing Team with YAHAGIの長島哲太選手は16周を走行し、9周目に記録した1分48秒922でトップと0秒328差の2番手につけた。午後は雨によるウェットコンディションとなったが、長島選手は周回を重ねながらペースを上げ、14周目に1分58秒029を記録。トップと2秒158差の5番手でセッションを終え、変化する路面状況の中でタイヤやマシンの確認を進めた。

金曜日のA.R.T.合同走行はドライコンディションで行われた。午前のセッション1では4周目に1分48秒512を記録し、トップと0秒194差の3番手。午後のセッション2では3周目から1分48秒台で安定して周回を重ね、7周目に1分48秒358、10周目には1分48秒350までタイムを更新した。一度ピットに戻った後、最終14周目に1分47秒326をマーク。セッション最速タイムを記録し、金曜日の総合順位でもトップに立った

土曜日は朝から雨となり、40分間の公式予選は気温19.6度のフルウェットコンディションでスタート。長島選手は序盤から慎重にペースを上げ、12周目に2分00秒367、14周目に1分59秒987、15周目に1分59秒818と順調にタイムを縮めた。16周目には1分58秒989を記録して5番手に浮上。続くアタック中の5コーナーで転倒したものの、それまでに記録したベストタイムでレース1の5番グリッドを獲得した。また、セカンドベストタイム(1分59秒818)により、レース2は6番グリッドからのスタートが決まった。

【レース1決勝】

土曜日午後のレース1は、雨が降り続くフルウェットコンディションの中、15周で争われた。5番グリッドからスタートした長島選手は、オープニングラップを5番手で終えると、序盤は先頭集団の後方につけた。3周目には自己ベストとなる1分58秒053を記録して前を追ったものの、雨脚が変化する難しいコンディションの中で次第にトップグループとの差が広がっていった。それでも長島選手は大きくポジションを落とすことなく5番手をキープ。中盤以降は2分00秒前後のペースで安定した周回を重ね、30分09秒639のタイムで5位チェッカーを受けた

【ウォームアップ】

日曜日朝のウォームアップ走行は、気温20.3度、路面は引き続きフルウェットというコンディションで行われた。長島選手は2周目に2分03秒102を記録すると、3周目には自己ベストとなる2分01秒765までタイムを短縮。その後は一度ピットに戻り、残り5分で再びコースインした。6周目に2分04秒669を記録するなど計8周を走行し、トップと5秒204差の11番手でセッションを終了。午後のレース2に向け、変化する路面状況やマシン、タイヤの状態を最終確認した。

【レース1後コメント】

■JSB1000 #45 長島哲太選手

「ドライではすごくいい手応えがあったので、乾いたコンディションでレースをしたかったのですが、天候には逆らえません。ライダーとしてできることを精いっぱい試しましたが、予選終盤に転倒してしまい、レース1も苦しい戦いになりました。ウェットタイヤは雨のコンディションでなければテストできず、走行機会が少ないので仕方のない部分もあります。明日はドライになりそうですし、面白いレースができると思うので、楽しみにしていてください」

【レース2決勝】

8月30日(日)、JSB1000クラスのレース2は、前日とは異なるドライコンディションのもと17周で争われた。スタート直前にはヘアピン付近で一時雨がパラついたものの、ウォームアップラップまでには止み、気温約24度、路面温度31度、湿度77%の環境下でスタートを迎えた。
6番グリッドのDUNLOP Racing Team with YAHAGI・長島選手は好スタートを決め、4コーナーで4番手、S字コーナーの進入で3番手まで浮上。2周目の2コーナーで2番手に上がると、続くV字コーナーで水野涼選手をかわして早くもトップに立った。

長島選手は2周目に1分48秒218を記録。その後も水野選手を背後に従えながら安定したペースでレースをリードし、6周目に1分48秒098、8周目に1分48秒024、9周目には自己ベストとなる1分47秒802までタイムを短縮した。ちなみに、今季開幕戦もてぎのファステストラップは、同レースを制した水野選手の1分48秒107で、2位となった長島選手のベストは1分48秒587であった。コンディションの違いがあるとはいえ、従来のレースペースを大幅に上回るハイレベルなトップ争いが僅差で展開された。

水野選手との差は終始1秒以内で推移したが、長島選手は周回ごとにペースをコントロールしながら主導権を渡さず、16周目にも1分47秒918をマークして最終ラップへ突入。最終周の5コーナーで水野選手に先行を許したものの、130Rで即座に抜き返して再び首位に立つ。しかし、続くヘアピンの進入で水野選手にインを奪われ2番手に後退。90度コーナーでも再逆転を狙ったが、水野選手がラインを守り切り、そのままチェッカーを受けた長島選手は優勝した水野選手とわずか0秒100差、タイム30分45秒824で悔しくも2位表彰台となった

RSNの中冨伸一選手は着実に17周を走り切って11位フィニッシュ。TONE Team4413 BMWの星野知也選手は、自己ベストとなる1分51秒741を記録したものの、エンジントラブルにより7周でレースを終えた。

【レース2後コメント】

■JSB1000 #45 長島哲太選手

「もてぎは今季の中で最も勝てる可能性が高いと考えていたので、この夏は今日のために準備を進めてきました。レースではペースを細かく調整しながら水野選手を引き離そうと試みましたが、すべて対応されてしまいました。最後まで勝つために全力を尽くしましたが水野選手は強く、今回は完敗です。ドゥカティは加速やストレートに強みがあり、僕自身も減量に取り組むなど、プロとしてできる準備はすべてやり尽くしました。当初は『なぜダンロップなのか』と疑問視されたプロジェクトですが、今やトップを走行しレースを牽引できるまでに成長しています。次の岡山までは時間もありテストの機会も残されているので、マシンとタイヤをさらにアップデートし、ダンロップと共に最後まで勝利を目指して戦い続けます」

■JSB1000 #46 星野知也選手

「左膝が十分に曲がらずマシン上での動きに制限がある状態でしたが、身体のコンディション自体は決勝が一番良好でした。ウェット走行ではフィーリングがなかなか改善せず、セットアップを色々試したものの思うような方向には進みませんでした。決勝のドライではトップ勢と比較してもまずまずのペースで周回できていただけに、あと0秒5ほどタイムを詰めたかったのですが、エンジントラブルでストップしてしまいました。タイヤ開発については前向きに進んでいますが、現在の仕様は夏場や高温時に適した特性が強いため、今後は温度変化に左右されにくく、より広いレンジで性能を発揮できるタイヤにしていきたいです」

■JSB1000 #21 中冨伸一選手

「天候が変化したことで、レインタイヤとスリックタイヤの両方を試すことができ、新しい仕様を含めて貴重なデータを集められました。結果には満足していませんが、テスト機会の少ないレインタイヤの開発という面では意味のある週末になりました。雨量が増えて水膜ができるとグリップが大きく低下し、ヤマハの車体特性も含めて厳しい部分が出ました。日曜日は事前に試していないセットにも挑戦しましたが、今後につながる方向性を確認できたと思います。今回得たデータをしっかり整理し、次戦の岡山ではさらに前進できるよう、集中して取り組んでいきます」

芝本昇平(タイヤ事業本部 技術本部 第二技術部

今シーズンは、タイヤ開発そのものが新しい段階に入っています。開発初年度や昨年までは、キャラクターの異なる複数の仕様を比較しながら方向性を探っていましたが、現在は明確な基準となるタイヤが確立され、その基準タイヤをベースとした派生仕様の開発、評価を進めています。
チーム側にもタイヤの基本特性を十分に理解していただいており、現在はその特性を前提として、タイヤの性能を最大限に引き出すための車体セットアップを進められる段階となっています。

今回のもてぎでは、金曜日のFP3でリアに新構造仕様を投入しました。剛性面では良好な評価を得ましたが、グリップが十分ではなく、ラップタイムでは基準タイヤにアドバンテージがあったため、その後は基準タイヤを選択しました。
今回に向けては、昨年のような超高温環境を想定し、それに対応できるタイヤを準備していました。そのため、決勝でも路面温度が31℃にとどまるコンディションは、むしろ想定外でした。木曜日には路面温度が十分に上がらず、グリップ不足に苦しみましたが、金曜日には気象条件に合わせた車体セットアップを見つけることができ、それが決勝でのパフォーマンスにつながったと考えています。仮に昨年と同様の高温コンディションになったとしても、今回と同等のパフォーマンスを発揮できる手応えを持っていました。

タイヤの性能面では、開発当初から旋回性を高め、コーナリングスピードを向上させることを重要なテーマとしてきました。その一方で、現在大きな強みとなっているのが、フロントタイヤのブレーキング性能と、車体を起こして加速へ移る際の高いトラクション性能です。特にブレーキング性能は長島哲太選手のライディングスタイルとの相性も良く、非常に高いレベルに到達していると考えています。

今回のもてぎでは車体側にもアップデートが施され、スロットルオンの時間を長く確保し、ストレートスピードによってタイムを稼ぐ方向を狙いました。その中で、フロントタイヤがコンパクトに方向を変え、素早く加速体勢へ移るラインを許容できたことが、今回のラップタイムにつながったと考えています。また、深いブレーキングが可能になったことで、ライバルからオーバーテイクされにくいレース展開を作ることにも貢献したと思います。

現在のブレーキング性能は、接近戦や追走時にも武器になると考えています。一方で、さらなる戦闘力向上のためには、高速コーナーで現在よりもイン側のラインを走れるような、より高い旋回性能を実現する必要があります。
もうひとつ、今回のレースで開発の成果として確認できたのがタイヤライフです。コンパウンド開発によって、開発当初と比較して耐久性は劇的に改善しました。従来からの強みであるウォームアップ性能を維持しながら、熱ダレを高いレベルで抑えられるようになっています。
ブレーキングからの一次旋回性能と加速性能については、すでに高いレベルに到達していると評価しています。一方で、レースを通じたアベレージタイムをさらに向上させるためには、フルバンク時の旋回性能をもう一段引き上げる必要があります。そこが今後も重点的に取り組んでいく開発テーマだと考えています。

【今回の結果を受けて技術陣からの一言コメント】

栃木祐紀

悔しい結果となりましたが、このプロジェクトに関わる全員が全力を尽くした上での結果です。気持ちを切り替えて、次戦に向けて準備を進めます。

中野政秀

これまで積み上げてきた開発の方向性に間違いはなかったと思いますし、実際に初勝利が見えるところまで来ていました。それだけに、あと一歩届かなかった結果は重く受け止めています。この経験を次の開発につなげていきます。

芝本昇平

最後まで勝利を争いながら結果につなげられなかったことは、本当に悔しく感じています。ただ、これまで結果が出ない中でも開発を続けてきたメンバー全員の積み重ねが、今回の走りにつながりました。今回の走りが、われわれの限界だとは考えていません。さらに良くするための開発を続けます。


JSB1000 レース1Result

順位 選手名 チーム メーカー タイム
1位 水野 涼 SDG DUCATI Team KAGAYAMA DUCATI 29'34.161
2位 野左根 航汰 Astemo Pro Honda SI Racing HONDA 29'41.079
3位 中須賀 克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM YAMAHA 29'45.639
4位 國井 勇輝 SDG Team HARC-PRO.Honda HONDA 29'56.840
5位 長島 哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI HONDA 30'09.639 Dunlop ユーザー
6位 岩田 悟 Team ATJ HONDA 30'18.807
12位 星野 知也 TONE Team4413 BMW BMW Dunlop ユーザー
15位 中冨 伸一 RSN YAMAHA Dunlop ユーザー

JSB1000 レース2Result

順位 選手名 チーム メーカー タイム
1位 水野 涼 SDG DUCATI Team KAGAYAMA DUCATI 30'45.724
2位 長島 哲太 DUNLOP Racing Team with YAHAGI HONDA 30'45.824 Dunlop ユーザー
3位 國井 勇輝 SDG Team HARC-PRO.Honda HONDA 30'55.902
4位 中須賀 克行 YAMAHA FACTORY RACING TEAM YAMAHA 30'59.057
5位 西村 硝 S-SPORTS SUZUKI SUZUKI 31'03.376
6位 津田 拓也 Team SUZUKI CN CHALLENGE SUZUKI 31'03.487
11位 中冨 伸一 RSN YAMAHA 31'57.221 Dunlop ユーザー
リタイア 星野 知也 TONE RT SYNCEDGE4413 BMW BMW Dunlop ユーザー

JSB1000Point

順位 選手名 ゼッケン チーム / メーカー ポイント
1位 水野 涼 88 SDG DUCATI Team KAGAYAMA 175.0
2位 長島 哲太 45 DUNLOP Racing Team with YAHAGI 112.0 Dunlop ユーザー
3位 中須賀 克行 1 YAMAHA FACTORY RACING TEAM 109.0
4位 野左根 航汰 4 Astemo Pro Honda SI Racing 95.0
5位 國井 勇輝 92 SDG Team HARC-PRO.Honda 87.0
6位 岩田 悟 6 TeamATJ 58.0


ST1000

井手翔太が雨のレース1を制覇 羽田大河は13番手から大逆転でレース2優勝

【レース1】

雨が止み、路面の雨量が少ない状況の中でレース1がスタート。亀井雄大選手がうまく飛び出してレースを引っ張ったが、雨の中の予選でポールポジションを獲得した井手翔太選手がその速さをレース1でも発揮し、3周目にトップに立つと、そのままハイペースでラップし、トップチェッカーとなった。

井手翔太選手

「結果的に勝てて良かったけど、レース中に難しいシーンもあったし、自分に運があったと思います。予選後にマシンをチームが改良してくれて、すごく良くなりました。それが今日の勝因だと思います。昨年の最終戦に続き、雨のレースでの勝ちになりますが、明日のドライでも勝ちたいと思います」

【レース2】

國峰琢磨選手が序盤から積極的にペースを上げ、レースをリード。予選でエンジンが壊れ、13番手グリッドからスタートとなった羽田大河選手がハイペースで追い上げ、終盤に追いつくと、ラストラップに國峰をパスし、トップチェッカーとなった。

羽田大河選手

「予選は4周目にエンジンが壊れてしまい、そこで終わってしまったので、レース2のグリッドが13番手となっただけで、自分の調子が悪いとか、そういうことはなかったです。どんなスタート位置でも自分の走りには自信があったので、特に気にはなりませんでした。ただ、決勝中は1分49秒6とかなり速いペースで走っても、國峰選手との差が詰まらないので、かなり良いペースで走っているんだなと思いました。なので、最後まで勝てるかどうか、そこは自信が持てなかったですね。チェッカーの瞬間はとても嬉しかったです」


ST1000 レース1Result

順位 選手名 チーム メーカー タイム
1位 井手 翔太 AKENO SPEED.RC KOSHIEN YAMAHA 23'55.893 Dunlop ユーザー
2位 國峰 啄磨 TOHO Racing HONDA 23'57.381 Dunlop ユーザー
3位 名越 哲平 SDG Team HARC-PRO. Honda HONDA 23'59.667 Dunlop ユーザー
4位 羽田 太河 Astemo Pro Honda S I Racing HONDA 24'01.035 Dunlop ユーザー
5位 伊藤 元治 YAHAGI Racing Team HONDA 24'01.756 Dunlop ユーザー
6位 豊島 怜 MOTOBUM HONDA HONDA 24'15.926 Dunlop ユーザー

ST1000 レース2Result

順位 選手名 チーム メーカー タイム
1位 羽田 太河 Astemo Pro Honda S I Racing HONDA 22'05.788 Dunlop ユーザー
2位 國峰 啄磨 TOHO Racing HONDA 22'05.897 Dunlop ユーザー
3位 荒川 晃大 Astemo Pro Honda SI Racing HONDA 22'16.013 Dunlop ユーザー
4位 伊藤 元治 YAHAGI Racing Team HONDA 22'22.649 Dunlop ユーザー
5位 井手 翔太 AKENO SPEED.RC KOSHIEN YAMAHA 22'24.243 Dunlop ユーザー
6位 名越 哲平 SDG Team HARC-PRO. Honda HONDA 22'24.655 Dunlop ユーザー

ST1000Point

順位 選手名 ゼッケン チーム / メーカー ポイント
1位 羽田 太河 1  Astemo Pro Honda S I Racing  88.0 Dunlop ユーザー
2位 國峰 啄磨 104  TOHO Racing 80.0 Dunlop ユーザー
3位 名越 哲平 56  SDG Team HARC-PRO. Honda 53.0 Dunlop ユーザー
4位 井手 翔太 4 AKENO SPEED.RC KOSHIEN 49.0 Dunlop ユーザー
5位 荒川 晃大 5 Astemo Pro Honda SIRacing 46.0 Dunlop ユーザー
6位 伊藤 元治 12 YAHAGI Racing Team 42.0 Dunlop ユーザー