ミルビルのスプリングクリーク・モトクロスパークは、1983年にAMAプロモトクロスの招致に成功して以来、夏を象徴するラウンドとしてシリーズのレギュラーポジションを占めてきた。その名が表す通り、山の麓を流れる小川に沿って設けられたコースで、パドックとコースの行き来に橋を渡るのも、当地ならではの趣だ。前半はサンド質の平坦な地形だが、後半は山の斜面を利用したアップダウンになり、路面は硬質に変化する。タイヤ特性としては、軟質から硬質路面までカバーするレンジの広さが求められる。
今大会は、プロ引退を表明したジェレミー・マーティン(ヤマハ)のラストレースとして話題となっていた。スプリングクリークは両親が所有するコースであり、マーティンにとってはホームグラウンドどころか「家」なのである。AMAプロモトクロス250チャンピオン(2014・2015)がブーツを脱ぐ場所として、これ以上のシチュエーションはなかった。
タイムクオリファイで最速タイムを刻んだのは、450=1分53秒219=ジェット・ローレンス(ホンダ)、250=1分57秒207=ヘイドン・ディーガン(ヤマハ)。ポイントリーダーとしてレッドプレートを保持する2人が、各々ポールポジションを獲得する順当な予選結果となった。
450クラスのモト1(30分+2周)では、ホールショットのJ・ローレンスが1周目に転倒するハプニングが発生した。前戦のモト2に続いてのミスだったが、今回のJ・ローレンスは15位からの再スタートとなった。オープニングラップのオーダーは、ハンター・ローレンス(ホンダ)、アーロン・プレシンガー(KTM)、ホルヘ・プラード(カワサキ)。注目のJ・ローレンスは、凄まじい追撃の末に6周目2位まで到達した。
レース中盤以降は、H・ローレンスとJ・ローレンスの優勝争いが焦点となる。両者の間にあった10秒のギャップは、一時6秒差まで詰まったが、残り5分を切る辺りからJ・ローレンスが追撃の手を緩め、H・ローレンスが今季初のモトウィンをゲットした。
450クラスのモト2は、ローレンス兄弟のホールショット争いで始まった。コーティ・ショック(ヤマハ)、プラード、バランタン・ギヨー(ヤマハ)が続いたが、1周目のコントロールラインではチェイス・セクストン(KTM)が3位に浮上した。J・ローレンスとH・ローレンスは、1~2秒差を保ちながらグループから抜け出したが、レース後半になって独走に持ち込んだJ・ローレンスがトップチェッカーを受けた。
オーバーオールでは、J・ローレンスが優勝(2位/1位)。2位にH・ローレンス(1位/2位)、3位にはセクストン(3位/3位)が入賞した。開幕以来J・ローレンスの総合優勝が続いているが、今大会はH・ローレンスの健闘もあって、初めて同ポイントによるポディアム登壇となった。
Photo: MX Sports Pro Racing