第10戦　ミシガン州デトロイト

デトロイトSXは、前戦インディアナポリスSXと類似性のある大会だ。どちらもエアドーム（シルバードーム、RCAドーム）の老朽化によって現在の施設（フォード・フィールド、ルーカスオイル・スタジアム）が新設された経緯を持っている。スーパークロス会場としての快適性は向上したが、フットボール用競技場ならではのフロア面積の狭さに、コースレイアウトが制約されることも事実だ。かつてシルバードームの観客席にアップダウンセクションが設けられていたのは、コース長を稼ぐための策でもあった。
　近年のフォード・フィールドでは、1周40秒台という短いコースもあったが、今回はスタートストレートを3回横断する折り返しセクションで距離を稼ぎ、ラップタイムが50秒以上となるように工夫されている。さらに特筆すべき改良点は、小石や煉瓦の破片などの混入が不評だった昨年の土をふるいにかけ、異物を取り除いたことだった。だが本来の土質はあまり好まれず、粘土がメインで乾くとハードパックになる路面は、トラクションがつかみにくくライダーを悩ませた。
　19時からのナイトレースに進む、トップ40を決めるタイムクオリファイでは、両クラスとも僅差の攻防戦が見られた。450SXではチェイス・セクストン（ホンダ）が51秒439で最速。250SXではハンター・ローレンス（ホンダ）が、51秒999でポールポジションを獲得した。
　450SXのメインレース（20分＋1周）は、アーロン・プレシンガー（KTM）のホールショットで始まった。オープニングラップの競り合いでアダム・シアンサルーロ（カワサキ）が先行したが、2周目以降はプレシンガーがトップに立ってファーストラップを刻む。セカンドグループでは接戦が一向に終息せず、クーパー・ウェブ（KTM）、イーライ・トマック（ヤマハ）、ジャスティン・バーシア（ガスガス）らが、入れ替わり2位の座を争った。
　レースが中盤に差しかかると、プレシンガーのリードは6～7秒に広がり、セカンドグループの中ではスタート7位から追い上げてきたセクストンが際立つ存在となる。11周目にはセクストンがバーシアをかわして2位に浮上したが、独走を続けるプレシンガーを脅かすまでには至らなかった。ところが、終盤になって1～2位の差が詰まり、残り2周という局面でプレシンガーが転倒。これでリーダーが入れ替わり、セクストンが今シーズン2勝目を得た。2位ウェブ、3位トマック。なおセクストンは、レッドクロスフラッグ無視のかどで、26ポイントから7ポイント剥奪されている。
Photo: Feld Entertainment, Inc.

250SXのメインレース（15分＋1周）では、ヘイドン・ディーガン（ヤマハ）がホールショットを決めたが、オープニングラップからローレンスが先行し、ジェレミー・マーティン（ヤマハ）、ネイト・スラッシャー（ヤマハ）が追走した。4位に下がったディーガンは、ハーウェイポイントまでに反撃準備を整え、10周目には3位に浮上した。
　レース後半は、ローレンス、スラッシャー、ディーガンが各々単独走行となり、そのままポジションが変動するバトルが発生しないままチェッカー。ローレンスが3連勝で今シーズン5勝目をマークし、ポイントリーダーの座を固める結果となった。ランキング2位につけていたマックス・アンスティ（ホンダ）が、1周目のクラッシュで最後尾となったため、2位はスラッシャーに入れ替わり、ローレンスのリードは35ポイントに拡大。タイトルハンティングにおいて、圧倒的な優位に立っている。
　来週からはウエスト第5戦シアトル、第6戦フェニックスという日程になるので、イーストシリーズは4月15日まで3週ブランクになる。この変則的なスケジュールがどんな影響を及ぼすのか、タイトル争いの行方は予断を許さない。
Photo: Feld Entertainment, Inc.