DUNLOP Racing Team with YAHAGI インサイドストーリー3


レースウィークの流れとしては、初日に転倒があったりして、決勝へ向けたプログラムとしては進まなかった部分があったけれど、結果的には日曜日の朝のウォームアップ走行までに、今回ダンロップが持ち込んでくれたタイヤの評価は全数の確認が取れ、その解答と方向性の確認までいけたので、タイヤの開発テストという点に関しては良かったと思います。 レースということに対しては、開幕戦をこなし、第2戦へ向けて自分たちで作ったエンジンを持ち込んだのだけれど、それがレースウィーク中に壊れ、それまで調子が良かったエンジンが決勝に向けて使えなくなってしまったということはチームにとって、今回のレースに向けてはマイナス要素となってしまいましたね。 ただし、それは仕方のないことでもあります。2024年モデルという新型エンジンになり、データが少ない中で自分たちの手法を組み込み、パワーアップを狙ったわけですが、そうなってくると消耗部品であったりというところで負担が出てきます。新型エンジンということでパーツの距離管理がまだまとまってない中で、もちろんそこに対して自分たちの距離管理はメーカー指定よりも短くしていたのですが、それでもそのパーツが壊れてしまったことは、自分たちのデータになります。自分たちが場数を踏んでいけば、それは自ずと解消できます。それは例えば次のSUGOに向けてエンジンを作るに当たっても、貴重なデータになるわけです。

腕上がりに関して言うと、実は前回の鈴鹿でも実は腕上がりがありました。ただし今回のもてぎでは、より明確な腕上がりとして問題が露呈してしまいました。前回と今回では腕が上がった筋の部分が違っていたわけです。コースによって長島がマシンを繊細にコントロールする中で、どうしても負担のかかる部分というものは出てしまった結果のものでもあります。現状のバイクを走らせ、タイムを出し、さらに高いレベルでアベレージを刻もうとすると、必然的にライダーの負担は上がるわけで、本来であればそういうものをマシン側で補えれば良いのですが、そこに関しては今後、タイヤの開発がさらに進み、電気的な制御の部分をもっと細かくできるような段階に進んだときに実現できるようになっていくでしょう。現実的にそこはもう少し時間がかかる部分なので、現状としては仕方がない部分と言えます。長島のライディングを基軸に、腕が上がるという現状はあるにしても、そこをライダー側でコントロールしてもらわないと、今回の両レースでの6位というこの順位は得られません。


レース1の15周における腕の上がり方を見た上での6位というポジションは、自分の想定順位でした。レースが終わった後、長島の腕の上がり方を見たときに、「これで日曜日の20周のレースはちょっと厳しいかな」というのは感じたのですが、実はレース1の前に既に腕上がりの症状が出ていたので、腕上がりに対してサポートできる対策をチームとしては施していて、それが多少は良くなっていました。でもそれでもレース1では腕上がりして6位という順位でした。そのために第2レースは楽なレースにはならないと思ったので、長島にはレース前に「とにかく完走してほしい」と伝えました。
「タイヤ開発という目的のためにも、レース結果を残すというよりはとにかく20周走り切って、レースデータを持ち帰ることが、現時点でまずやらないといけないこと」と。だから長島の仕事としては、レース序盤に行けるところまで行って、腕が上がってもうどうにもならなくなったらピットに戻る、というよりは、20周走り切る方向に切り替えてもらった面があります。その言葉を受け、長島はレース2の序盤から腕上がりをしないような走り方をしてくれました。タイヤはレース1に使ったタイヤと同じものを選択しましたが、第1レースのフィーリングをベースに第2レースでは使い方を変えてくれ、そのタイヤをどう使って20周というレースに対してアベレージを上げながら走り切るかと取り組んでくれました。腕が上がりにくい、そして腕上がりをカバーするような走り方に切り替えてくれたことによって、第2レースでの6位という結果が得られたわけです。自分的に今日の第2レースは8位かな、って正直見ていました。でも序盤に赤旗中断もあり、20周というレースということで、周りが俺が思ってるほどタイムが上がらなかったから、そのことが6位という結果を助けてくれた部分もあったと思います。最後は高橋巧選手に詰め寄られましたが、最後はタイム差を考えながら『絶対に6位をキープしたい』という気持ちで最後にライディングしてくれたおかげで6位に終わりました。だからレース2に関しては私の評価としては『上出来』って言える内容でした。

一方、スタートして何秒後にゴールするかという点にフォーカスすると、1レース目が15周で19秒差。第2レースが20周で29秒。それは我々にとってまったくポジティブなものではなく、自分たちの実力を現実として目の前に突き付けられた感じです。これがグランプリに当てはめたら、最後尾くらいのタイム差ですからね。もちろんレースだから順位は大事ですが、でもそれだけじゃなく、トップとのタイム差をしっかりと認識し、何をどうやって1周のタイムを詰め、積み上げるにはどうしたら良いのかということを突き詰めていかないと、その差はいつまでたっても縮められません。今日のレースでは、20周して29秒差を付けらました。これをしっかりと削り取りながら、最終戦の鈴鹿のレースまでには10秒差まで詰めていく。 開幕戦の鈴鹿のレースは赤旗で中断になったし、マーシャルカーが入ったりしたから、正確なレースラップは出ませんでした。でも今回は2レースあり、15周での差、20周での差というものが明確に出たわけです。その指針を明確に認識し、分析して積み上げていくことでしか、差は詰められません。
そのことをダンロップと共有しながら開発して積み上げた先でその差がゼロになったとき、初めてトップになるわけです。でも我々のパッケージングによってトップとの差を詰めにかかれば、ライバルだって黙っては見ていないでしょうから、そこからさらに厳しい戦いになっていくのは間違いないですね。でもそれは最初から覚悟の上で、このプロジェクトをスタートさせたわけですからね。もちろんそこには、我々ならそれが可能、という勝算を踏まえてのものですから。


でも今回のレースは、すごく良かったですね。何よりもまず、長島が腕上がりという問題を抱えながらも無事にレースを終えることができたし、エンジンが壊れたことも、いやなタイミングで壊れるようなことがなく、データの蓄積もできたましたから。それは本当に、よかったことです。楽な戦いでは決してないけど、ダンロップの開発も加速している感覚があるし、我々もやるべき課題が明確になっているから、次のSUGOではさらに前に進めるはずです。

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