DUNLOP Racing Team with YAHAGI インサイドストーリー6

5月14日・15日に、宮城県スポーツランドSUGOで、全日本ロードレース第3戦に向けた事前テストが行われた。
今回のテストにDUNLOPが持ち込んだのは、2種類の異なるコンセプトによるプロトタイヤ。一つはダンロップ技術陣が、今季開幕前から開発を進めているタイヤで、メインストリームライン上のもの。もう一つは、7Cチーフエンジニアである藤沢裕一さんによる提案の、これまでとは違ったアプローチによる新コンセプトのものだ。
初日となる5月14日は、午前中1時間が2本、午後に2時間が1本の走行セッションが設けられた。長島哲太選手は1本目が1'28.659のタイムで7番手、2本目が1'28.099で8番手、3本目は1'28.129で9番手となった。3本目の途中、3コーナーで転倒を喫し、そこでこの日の走行は終了。翌日5月15日は午前中のセッションをキャンセル。午後45分間の走行に参加し、全部で11ラップ。1'27.724のタイムで9番手に付けた。


チーフエンジニア 藤沢裕一さん

ダンロップの開発陣が造りたかったタイヤが開発のメインストリーム上にあるもので、さらに今回は我々チーム側が提案した新しいコンセプトによるタイヤも持ち込んでもらいました。新しいコンセプトによるタイヤは、方向性を見ることは出来ましたが、ネガの部分もあり、今後の可能性と方向性に対する指針まで見ることはできませんでした。ただ、一つのアイディアとしてこういうアプローチもあるという確認をすることができたのは一つの収穫でした。そのため、今回のテストのほとんどの時間は、ダンロップがメインストリーム上の流れで造ってきたタイヤを使いました。走り始めからフィーリング自体は悪くなく、進化を感じるものでしたが、それとともに、気を付けなければいけない点、それはチーム側の管理ということですね。より高性能なタイヤになってくると、タイヤの管理もよりシビアなものが求められるようになるということを感じました。それは例えば、転倒のシーンが象徴的なものだと思うのですが、従来のタイヤであれば、ユーズドタイヤを履いて1周すれば暖まったところが、ちょっとフィーリングが良くないながらもこれまでの経験から、2周目にペースを上げたところ、思ったようなグリップが出なくて転倒してしまったわけです。今後はそういう状況の時は、もう少しウォームアップに時間をかけ、それでもフィーリングが上がってこなければピットに戻ってくるとか、より高性能なタイヤになっていくと、そうした対応も必要になってくるでしょうね。ダンロップとしても近い将来的には、今開発しているタイヤを市販し、幅広いユーザーに提供したいと考えているわけですから、そういう使い方のベースとのところも、我々が作っていく必要があるのです。そうした点も、さらに意識していく必要があると感じました。
初日は前日の雨の影響と風が冷たいということで、コンディション的には二日目の方が良かったということもあり、チームベストは二日目に出ました。初日の午後に転倒があり、かなり大きな転倒だったので、長島のフィジカルコンディションが懸念されましたが、二日目の午後に走ることができ、しかもそこでチームベストタイムを出せて、いちばん時間を使ってテストしたタイヤをレースで使う段取りまで確認が取れたのは良かったですね。今回のテストで自分的に大きな収穫は、今までタイヤとのバランスの問題でやりたかった車体設定が、今回持ち込んだ新しいタイヤによって実現することができた、という点です。車体を効果的に使うための荷重設定に対し、タイヤが応えてくれるようになったのは、マシンを造る側にとって、大きいですね。来週のレースウイークは、今回のテストの延長線上で入れるので、完全ではないですが、良い準備はできました。
長島が転倒してケガをしたのは痛手ですが、逆にそのことで、長島じゃないとできないようなライディングをしない状況で、今回のテストでのベストタイムが出たということはこの先、幅広いユーザーに提供していったとき、普通に乗って1分27秒台が出るわけだから、そういう確認がたまたま今回できて、そういう観点からも、貴重なデータ取りができたテストになったと言えますね。


長島哲太選手

初日は雨上がりのせいかコンディション良くなくて、新しいタイヤをテストしましたがフィーリング的には今ひとつの印象の中、少し無理したら転倒してしまいました結果的に昨日はそれで走行を続けることができなくなってしまったので、そこはもったいなかったですね。でも二日目の午後に身体の確認をしながら走り始めて、昨日と同じく今回新しく持ち込まれたタイヤを履いたのですが、それがすごくフィーリングが良く、それからも単純に昨日はコンディションが良くなかったのだと思いました。タイヤの確認がしっかり取れましたし、フィジカル的に無理せず、そこまで攻め込めてない中で1分27秒台だったので、もう少し頑張れば普通に6秒台も見えてくると思います。タイヤの進化を実感できましたし、とは言え、まだまだ根本的な解決かというと、そこまでは行けてないのが現実なので、さらに継続して開発していかなければなりません。でも、毎回毎回良くなって来ているのは間違いないので、一つ一つ確認しながら、さらに前進させていきます。


住友ゴム工業株式会社 タイヤ事業本部 技術本部 第二技術部 栃木 祐紀

開幕戦はアジア選手権ASB1000で使ってるタイヤをベースで使い、第2戦もてぎではJSB用に作り替え、その方向が正しいということが確認できたので、今回はそのさらに進化版というタイヤを持ち込みました。前後ともに新しいタイヤを持ち込みましたが、結果的に今回はリアが中心のテストとなりました。具体的には構造とゴムを変更しています。また全日本第3戦SUGO大会後、6月上旬に鈴鹿でテストができるので、そこへ向けて構造の方向性を確認しておきたい、というねらいもありました。荷重を掛けたところでのグリップなどはきちんとねらい通りになったので、転倒はありましたけど、テストとしては非常にたくさんの収穫を得たテストとなりました。今回のデータを基に、チームの方で車体の造り込みをしてもらい、来週のレースウイークに入ることになると思います。開発は常に先を見据えて先行して物造りをしていく必要があるので、来週のレースも大切ですが、さらにその次の鈴鹿のテストを見据え、実走で確認を取りながら準備しているのですが、そのあたりの確認もできたので、開発もさらに進められます。来週の第3戦で今シーズンの前半戦が終了となりますが、ライダーの頑張り、チーム力の高さに支えられ、開発は前倒しで進められている実感があります。正直、今シーズンの開幕前はもっとデータ集めに時間がかかるかと思っていましたが、現場でライダー、チームの作業が着実に進められるので、予想よりも前に進めています。この歩みをさらに加速できるよう、頑張って開発を進めていきたいと思っています。

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