DUNLOP Racing Team with YAHAGI インサイドストーリー10
シーズンオフに、岡山国際サーキットのほか、マレーシア・セパンでのプライベートテストなどもこなしてきたDUNLOP Racing Team with YAHAGI。そうしていよいよ、2025シーズン開幕を戦いました。チーム監督である藤沢裕一さんに、第1戦を終えての総括を伺いました。
リタイヤとなったものの、決勝レース序盤はトップを快走
今シーズンの初戦は、予選が1'47.829のタイムで5番手、決勝は序盤にトップを快走する走りを見せ、6番手走行中の13周目にトラブルによってリタイヤとなった。開幕前の事前テストでも、初日2番手、二日目は5番手と、安定して上位に食い込む走りを見せている。
「去年1シーズン戦ってベースの部分を築くことができたので、数字的に言うと30%くらいの土台を作ることができました。昨年は1年目ということでその土台がない状態だったから、今年は30%のところから最終的には60%くらいまで上げられればと考え、シーズンに入っています。去年はベースを作ることに専念していたので、今年は開発の配分を他の部分に当てられるようになりました。もちろん、まだまだ見えないところもあるので、段落的には得意な部分を伸ばしたり、または新たな挑戦の部分もあるので、何に時間を要するかは実際にやっていかないとなんとも言えないところはあります。決して楽ではないですが、先に進むための段取りをしやすくなっている、というのは事実ですね」
昨年シーズンとの違い
昨年は、レースウイークのセッションを使って開発の方向性を探っていたため、レースに向けてのセットアップはできず、当然のことながら、異なる方向性のタイヤもその中で投入されることもあった。
「去年はとにかくいろんなものを試し、いろんな方向性を理解し、どこに方向性を持っていくかということを確認する作業に追われてしまったので、レースに向けての準備はほとんどできなかった、というのが現実でしたね。でも、そうして去年の一年間の積み上げは、車体にもタイヤにも、確実なパフォーマンスアップに繫がっています。それと、ライダーもやはり昨年1年間を経験したことで、タイヤテストにマッチし始めた、という印象ですね。レースを戦いながらの開発なので、どうしてもリスクを負って走っていましたが、今年はそこを一つ引いて走るという、リスク回避ができてきています。そうして精神面で落ち着いてくると、開発ライダーとしての仕事がよりこなせるようになります。でも心のどこかで、その範疇を出てタイムを出したりと、コースに出てしまうと、今年は特に、周りを走ってるライダーの顔ぶれもレベルアップしているので、長島自身の闘争心というか、どうしても高まりますし、それは理解できます。でもそこで自分をコントロールするというか、リスク回避をしながらレースを戦う術を身に付けてくれないと、開発ライダーは務まらない。それはやはり、HRCのテストライダーもやり、実際にワイルドカードでワールドスーパーバイクに出たりもしているから、自分の立場がよりしっかりと理解できてきたのではないかと思いますね。昨年ももちろん、そういう冷静な部分を持ってはいましたが、今年はさらにもう一つ、落ち着きをもってきている印象です」
開発のための冷静さ
昨年の、言ってみればがむしゃらさと言うか、そういうものが今年は全セッション、レースでも落ち着いて戦っている、傍で見ていてそんな印象を受けた。それは、背景として長島選手の中に『開発のための冷静さ』というものが大きくなっているからなのだろう。
「冷静になりながらあのレベルのタイムで走ってくれると、やはり出てくるコメントの精度が上がってきます。タイヤのテストライダーとしてだけでなく、いわゆる『開発ライダー』という仕事をする上で、バランスが取れてきていると思います。ただ、来年はチャンピオンを獲りに行く、今年も表彰台に上がれるようなレースを増やしていかなければいけないとなると、それだけでは足りなくなります。それにはある程度、ライダーが集中して走れるようなタイヤを造っていく必要があります。今年はそういうところのバランス、パッケージが安定し、ある程度のレースアベレージを刻める車体というか、そういうところへ持っていかなければなりません。そのためのスタートとしては、初戦のレースはまずまずだったと思います」