DUNLOP Racing Team with YAHAGI インサイドストーリー11


住友ゴム工業株式会社 タイヤ事業本部 技術本部 第二技術部 栃木祐紀(左)

2025シーズン、年明けにマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキット、岡山国際サーキットでテストを行い、そして第1戦もてぎ、第2戦SUGO大会と戦ってきた。ここまでの開発の流れをプロジェクトの開発エンジニアとして担当する住友ゴム工業株式会社 タイヤ事業本部 技術本部 第二技術部 栃木祐紀さんにうかがった。

プロジェクト1年目 2024シーズンを振り返って

まず昨シーズンの総括から聞こう。

「去年はプロジェクトの初年度で、JSB1000クラスへ久しぶりに本腰をいれるということもあり、まずは基礎開発やデータ収集に重きを置いていました。本来であれば目の前のレースに向けたセットアップを進めていくべきレースウイーク中も、タイヤのテストを行っていました。レースを戦うという意味においては、とてもチームとライダーに負担を掛けたと思います。結果だけで言うと苦しい1年になりましたが、タイヤテストという点においてはいろんなデータが採れ、それが今年に反映されてきています。そういう意味合いでは、1年目の目的は達成できたのかなと感じています。」


レースの世界では常にライバルが存在し、実戦に出て行くことで、ライバルとのリアルな差を経験する。実際に最前線で戦ってみての感想は、どのようなものだったのだろうか?


「このプロジェクト自体が、今までの設計の環境や進め方を変えてチャレンジしよう、という意味合いがあります。実際に開発のやり方を変え、チャレンジし始めてきた中で、どこに差があるのかということが実戦の中で明確に見えてきたので、そこをどうやって今のやり方の中で埋めていくか、というレベルに来ていると感じています」

実際の走行テストを重ねるのはもちろんだが、そこへ至る手前でコンピュータによるシミュレーションを行い、設計時点での精度を上げる。それができれば、テストメニューも絞り込むことができ、結果として開発スピードを上げることに繫がる。

「基礎研究の部分でシミュレーションを積極的に使っていますし、ASB1000や全日本ST1000クラスのタイヤ開発なども同じ部署で行っています。JSB1000単体ではなく、そうして蓄積されたデータも、現在のプロジェクトに活用しています。また、今回は3年のプロジェクトということで、長期的な計画を立てて腰を据えて開発しているという点が、過去の全日本JSB1000クラス参戦時とは大きくアプローチが違います。当時は目の前の戦いのために追われ、そこでの開発に終始していましたが、それがもっと長期的視野になっているという点が、非常に大きな違いですね」


シーズンオフでのテストは、どのような開発タイヤを持ち込んでいたのだろうか。

「去年からリアの加速性の向上に重きを置いて開発を進めています。その部分に関してまだ不足している部分があるので、そのテーマを中心に進めながら、フロントに関しても、リアのグリップが上がってきたことでフロントの性能の足りない部分も分かってきたため、フロントの開発テストも始めました。それを年初のテストから継続して実施している、という流れですね」

リザルトに反映されつつある開発の進捗

第2戦SUGO大会のレース2ではトップも走り、レース展開的に昨年と比べて向上している印象がある。


「去年はとにかく基礎データ収集がメインとなりましたので、レースウイークもチームにはテストタイヤを履いてもらい、レースに向けたセットアップが出来にくい状況でした。そうして得られた基礎データをベースに今年の開発タイヤを造っているので、まだ十分ではないですが、多少は形になってきたところが、レース展開に出ているのだと感じています。去年までは予選用タイヤを予選では投入していましたが、今年はここまでのレースすべて、決勝用タイヤで予選タイムを出しています。タイムを比較しても、昨年の予選用タイヤで出したタイムと同レベルのタイムを出すことができているので、そこは一つの開発の成果が出せているかな、と思います」

第1戦はトラブルによるリタイヤという残念な結果となった。そこから第2戦へ向けてのアップデートは、どのようなものだったのだろうか。

「開幕戦は残念な結果になりましたが、昨年仕様のリアタイヤに対して大幅な性能向上を確認できました。
SUGOでは、開幕戦のタイヤをベースに後半戦に向けた開発課題を明確にするため、リアタイヤの問題点の抽出に取り組み、さらに年初から基礎開発で取り組んできたフロントの新仕様の評価を行いました。
次回の第4戦までは少しインターバルがありますので、リアタイヤはピークの性能を上げる開発を進めます。そのために、構造自体を設計変更し、進めていこうと準備しています。対して新仕様のフロントタイヤは、SUGOの事前テストでライダーのコメント的にも先の可能性がありそうなので、そこを6月、7月のテストで固めて行こうと考えています。そうしてフロントとリアの基準となるタイヤを造り、後半戦はそれをベースにやっていくという形にしたいですね」


第2戦SUGO大会では、ダンロップタイヤのワンメイクであるST1000クラスは、予選から非常に高いレベルでレースが展開された。当然、タイヤのパフォーマンスアップあってのもの。そのあたりの技術交流は、あるのだろうか。

「同じ部署でST1000やASB1000のタイヤを開発していますので、具体的に言えば、隣の机に座っている人間が担当しているようなイメージです。ですから当然、技術的な共有はしていますし、逆にこちらのプロジェクトで行っていることも、彼らも把握しています。ですから、そうした形でデータ共有しながらお互いの開発を進めている感じです」


プロジェクトとして結果を出すべき3年目に向け、2年目の後半にさらに大きなステップを踏むための準備が着々と進められている。長島哲太選手のさらなるライディングに注目が集まる。

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