DUNLOP Racing Team with YAHAGI インサイドストーリー13
長島哲太インタビュー 2025シーズン振返り


ラウンドゼロで感じた「1ステップ上がった」感触

今年の開幕前のラウンドゼロ、モビリティリゾートもてぎで新しいタイヤを履いて走り出した段階で、「ワンステップ進んだな」という手応えを感じました。

今年一年、当面の目標としていた「表彰台」というものが、頑張れば現実になるかもしれないという手応えをつかんでシーズンが始まりました。ただ、まったく新しいものを造り出していくのが開発なので、うまくいく時もあれば、うまくいかない時もある。その「最初の状態」ができてきたという感覚でした。
そして実際は、開幕のもてぎのテストから良い感触を得た状態でスタートし、レースウイークに入って「決勝もこれならいけるかもしれない」ということで、スタートダッシュを決めることができました。
その後もなんとか踏ん張ってはいたのですが、残念ながら問題が出てリタイアとなってしまいました。


そうしてその問題がなかなか解決できないまま第2戦SUGOを迎えることになりました。


SUGOでは限られた時間の中で開発を進めたタイヤを使用しました。実際のレースではウェットというコンディションに助けられた一面もあり、トップを走ることはできたものの、自分としてはすごく歯がゆい気持ちが大きかったです。
ただ、そうした状況の中でも、その新しいタイヤを今後のテストでさらに改良していくという話を聞き、ダンロップのエンジニアの頑張りに期待しました。

全日本第4戦を迎える前に減量を敢行

ターニングポイントとなったもてぎ(全日本第4戦)でのレース2

夏のもてぎ(全日本第4戦)は自分にとってすごいチャンスだと感じていたので、減量をしました。

ドゥカティ、BMWという外車勢も加速からストレートがとても速いですし、チームも頑張ってバイクを仕上げてくれて、マシン面での軽量化も進めてくれていました。そうなってくると、自分ができることは減量しかない。普段のベスト体重から6kgほど落としました。体脂肪率も5〜6%くらいに落とし、かなりきつい思いをしました。あれほどしっかり減量したのはJ-GP3以来でしたね。

久々のつらい減量を経て迎えた夏の全日本第4戦でしたが、まだその問題は解決できていませんでした。

その結果、レース1は仕方なくST1000のタイヤを使わざるを得ませんでした。自分としてはそれがすごくフラストレーションで、やはり減量というのは相当つらいものがあります。そこまで頑張ってきたのに、期待していたタイヤが使えない。ましてや、代わりのタイヤでは目の前のライバルに対して戦うことすらできない。


そこは今シーズンを振り返ってみても、一番周りの方々に申し訳なかった部分です。自分としてもかなり真剣に取り組んでいたので、レース後の表情にもそれが出ていたと思いますし、態度にも少し表れてしまっていたと思います。悔しさや憤りというものをかなり感じていました。


ただそれで、ダンロップのエンジニアも腹をくくってくれて、「問題が出るかもしれない」という状態のタイヤを使う中でも、チームやダンロップが安全面での最低限のラインを決めた上でレースを走りました。

それがやはり手応えとしてとても良く、最後まで3位争いを繰り広げました。実際、問題が出始めたのはおそらくラスト7周ぐらいからだったと思いますが、そこから水野選手に離されて4位という形で終わりました。

でも、自分が感じていた手応えは間違いではなかったという自信になりましたし、開発が確実に前へ進んでいるという実感もありました。あそこが今年いちばんのハイライトだったと思います。

着実に開発を進めて迎えた第6戦・岡山国際サーキット

その後のオートポリスはなかなか厳しく、レイアウト的にもホンダという車両の特性との相性が悪く、そこはある程度事前に分かっていたことでした。


そのため、開発に全振りしながら、レースウイークの中で「良かったタイヤがどう動くのか」「それに対して何をしなければならないか」といった過去の確認を含めて取り組みました。
レースに関して序盤は良かったですし、昨年に比べればレースタイムも大幅に進歩させることができました。順位的にはレース1が7位、レース2が6位という結果でしたが、内容的にはとてもポジティブな形で進めることができました。

次の第6戦岡山国際サーキットに関しては事前テストの段階から手応えがありました。

もてぎで良かったタイヤをベースに進化させたタイヤだったので、間違いなく岡山でも機能すると思っていました。それはダンロップのエンジニアもチームも同じ認識で、しっかり事前テストから開発を進めました。特にフロントの改良がうまく進み、テストではロングランも順調にこなせました。
そうした準備があったからこそ、決勝日だけ急にウェットからドライに変わっても、苦しむことなく走れました。これは棚ぼたではなく、自力で掴んだ表彰台だったので、あれはダンロップとしても胸を張って良い結果だったと思います。


自分としてもようやくホッとできる一面がありました。もてぎから減量を継続していましたし、今も体重を落としている状態なので、それがようやく報われたような感覚でした。


ダンロップのスタッフもすごく喜んでくれて、ファンの方々も同じように応援してくださって、本当にやってきて良かったと思えた瞬間でした。感慨深かったですね。
自分一人で開発しているので、基準というものがブレると全てがずれてしまいます。そこはとても大事な部分だと思っていますが、人間なので迷いは生じますし、結果が出なければ自信もなくなります。だからそうならないように、最初から150%で走って、とにかく前へ前へという走りをしています。

それが岡山のレースで確信に変わりました。ズレていない、そしてダンロップと共に戦ってきて、間違いなく頂点を目指せるという実感を得た瞬間でもありました。もちろんまだ先は長いですが、「不可能ではない」ということを少しは見せられたのではないかと思います。

最終戦・鈴鹿の戦い

最終戦の鈴鹿は、このサーキットの特性上、高荷重域のコーナーが多いので、オートポリス同様に苦戦するだろうと覚悟していました。


そんな中、木・金曜とセットアップを進めていき、少し手応えを感じつつも「やはり厳しいな」と思っていました。

土日を走ってみて、雨は岡山のとき同様にそれほど悪くなく、自分としては自信を持って戦えると思っていました。レースはその通りで、セッティング的に足りない部分があったものの、表彰台を狙える位置にいました。

しかし少し欲を出したところで転倒してしまいました。あれは完全に自分のミスです。チームには本当に申し訳ないのですが、あの場面では攻めざるを得ませんでした。どうしても表彰台が欲しかったので。

レース2に関しては、正直自分でも何が起こっていたのか分かりません。
チームに解析してもらっていますが、ウォームアップからリアのグリップがまったくなく、ストレートでも振られるような状況で、序盤にペースを上げられず順位を落としてしまいました。そこから試行錯誤しながらなんとかペースを上げていきましたが、あれが限界で9位という残念な結果に終わりました。


この二日間はシーズンの締めくくりとして気持ちよく終わりたかったのですが、そうはいかず、久々に苦しいレースウイークでした。

プロジェクト3年目に向けての抱負

昨年はプロジェクトが始まり、まず開発の下準備としてレースウイークの時間も開発に充てました。
そうした基礎開発を踏まえ、今シーズンはそれを飛躍させる年として「表彰台獲得」を一つの目標に置いてスタートしました。結果的に岡山で表彰台を獲得することができました。


そして来年はチャンピオン獲得を狙うシーズン。ただ、タイヤとしてはまだ足りていない部分があるのも事実です。チャンピオン獲得というのは言葉で言うほど簡単なことではなく、ライバルたちも強力なので、正直とても難しいと思っています。
しかし、自分たちが目指しているのは「チャンピオン」であって、「いいレースだったね」「頑張ったね」という言葉ではなく結果を出すことです。
そこに向けて苦難の道だとは思いますが、今のダンロップの開発陣やチームのみんなとなら乗り越えられると岡山で感じました。

一つ一つのレベルを上げ、全力でやる以外に道はありません。
シンプルといえばシンプルですが、難しいといえば難しい。本当にそこへ向けてコツコツと積み上げていくしかないです。

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