タイヤの役割と構造

タイヤの役割から構造が決まる

代表的なタイヤの役割

  1. 車体やライダーの重さを支える
  2. 凸凹等路面の衝撃を和らげ、走行をスムーズにする
  3. 駆動力・制動力を路面に伝え、発進、加速、制動を行う
  4. 車体の方向転換や維持等、進みたい方向へ車体を導く

車体を構成する他の部品と異なり、1つで多くの役割を果たしているのがタイヤの特徴です。

タイヤの構造

多くの役割を果たすために、タイヤはいくつものパーツで構成されています。



カーカス
タイヤの骨格となる部分。内部の 空気圧を保持し、タイヤが受ける荷重・衝撃に耐えます。
トレッド
直接路面に接する部分。厚いゴム層で 内部のカーカスを保護しています。摩耗に耐え、スリップを防止する等のため、様々なパターンが刻まれています。
サイドウォ ール
走行時もっとも大きくたわむ部分。内部のカーカスを保護し、屈伸運動がスムーズに行えるように設計されています。
ビード
タイヤをリムにしっかりと固定する部分。リムとの摩擦損傷を防ぐためチェーファー(補強コード層)、ゴム層などで補強されています。
ビードワイヤー
強力なピアノ線を幾重にも束ねて、空気圧によるカーカスコードの引っ張り力を受け止めます。
べルト / ブレーカー
剛性を高める為に、トレッドとカーカスの間に入れる補強コード層、ラジアルにはベルトが、バイアスにはブレーカーが使われます。
インナーライナー
チューブレスタイヤではチューブの替わりとなる部分。内側の空気を包む役割をします。

バイアス構造とラジアル構造



現在は大きく分けてバイアスとラジアルの2タイプが製造されています。 バイアスタイヤは、カーカス及びブレーカーのコードを中心線に対し30〜40度の角度(バイアス)で交互に貼り合わせています。このコード角によってタイヤの形・剛性が決まります。ラジアル構造に比べて、設計自由度は小さいですが、路面のギャップをタイヤ全体で吸収しますから、ラジアルよりも乗り心地が良いのが特長でアメリカンやスクーター等、快適性を求められるバイクに装着されています。 ラジアルタイヤは高速耐久性に優れた構造で、ほとんどのオンロードスポーツバイクに装着されています。カーカスのコードはタイヤ側面から見て放射線状(ラジアル)に並んでおり、中心線に対し0度〜20度のベルトによって締めつけられています。剛性はベルトだけで決定できますので、トレッドとサイドウォール の剛性を別々にコントロールすることが可能です。そのため、バイアスよりも柔らかいグリップ力のあるゴムを採用できるなど、設計の自由度が高い構造です。

ダンロップのJLB(ジェイ・エル・ビー)構造


2輪車の更なる高速化という、時代が要求した構造がダンロップのJLBです。大排気量スポーツバイクのリアタイヤとして、高速時のグリップ性能と操縦安定性を向上させています。タイヤの周方向にコードを巻き付けたペルトで締めつけているため、遠心力方向の剛性が高く、高速耐久性・安全性が向上しています。また、トレッド部が柔軟になるため接地面積が増大し、安定したグリップ力を発揮します。ラジアルの弱点とされていたギャップ吸収性もアップし、タイヤの軽量化にも寄与しています。


4輪タイヤと2輪タイヤの旋回性の違い

4輪車の旋回



4輪車と2輪車で、最も大きく異なる要素としてコーナリングがあげられます。4輪車はハンドルを切ることによって発生するコーナリングフォースで旋回します。タイヤの形状もそれに合わせてトレッド面を広くとり、接地性を良くし、しっかりとグリップが得られるようなっています。

2輔車の旋回



4輪車に対して2輪車の場合は、バイクを傾けることによって発生する、キャンバースラストとコーナリングフォースで、旋回しています。キャンバーアングル(傾ける角度)が大きくなれば旋回力も増しますが、タイヤのショルダ一部にかかる負担も大きなものになります。またタイヤの空気圧によっても接地形状が異なり、旋回性能に影警を与えています。このようなコーナリング特性の違いや、求められる役割によってタイヤ形状が違ってきます。トレッド面は4輪のように平面的ではなくサイドに回り込む形状となり、ショルダ一部分の強度などにも2輪車独特の性能が求められています。

荷重配分による旋回特性の違い


2輪車の旋回特性ではキャンバーアングル以外に、荷重配分も重要なポイントになります。前輪の荷重を大きくすれば旋回力が増し、後輪の荷重を大きくすれば、トラクションの増大によって駆動力=加速性能が増します。 コーナー入口では前輪に荷重を掛けて旋回能力を上げ、コーナー出口で荷重を後輪に移すことで、バイクの立て直しから加速へ移る動作になっています。このことから、前輪にはコントロール性を、後輪にはトラクション性能が要求され、前後輪のバランスが旋回特性に大きく影響してまいります。

倒し込みの“きっかけ動作”について


ではバイクを旋回させるための、倒し込みについてこ説明しましょう。バイクを傾けたい方向と反対側へ、瞬間的にハンドルを切ることでコーナリングフォースが発生し、その反対方向に遠心力が生まれます。遠心力に引かれてバイクが倒れ、ハンドルが倒れた方向へ自然に切れていき、コーナリングヘ移行していきます。(コーナリング状態では図のようなバランスヘと移行します。) 以上のような流れで2輪車のコーナリングは行われています。レーサーから一般の方まで、ライダーはこの一連の動作を無意識に行っていますが、ダンロップはより自然に、よりスムーズに、不安を感じる事無く操作ができるバランスの取れたタイヤを理想として開発しています。